四人はテーブルを囲んだ。だが椅子は三脚分しかなく、チャービルが立つことにした。
「さて、色々話さなきゃいけないことがあるわけだけど……まず、君だ。どこからどんな目的でここへ?」
「……」
「どう見ても北サクハ系。移民とある程度上手くやってるシラミツ島先住民ならまだしも」
 チャービルがそこまで言ったところで、ユッカは自分を指して作り笑いを浮かべた。カラジは初耳であったが、ユッカの家系はシラミツ系という、シラミツ島を古くから拠点とする部族のようだ。
 チャービルは続ける。
「北サクハ系なら移民だらけのこの町では狙われて当然。考えなかったの?」
「知らなかっただけ」
「……オレたちは、違う文化を持つ人たちを騙して同じ思想に染めるようなことはしない。だから、君の見てきたことを教えてくれ」
「信用してもよさそうね。いいわ、話す」

 少女の話は、カラジが画面の向こうに見てきたもの、そのものだった。
 先住民を排斥する団体によって攻撃され、持ち物を奪われ、彼女の手持ちポケモンであったポワルンはある男に盗られた。
 そしてヒウメまで追ってくると、彼の仲間が持っていたポケモンたちに攻撃をぶつけられた。
 もしチャービルが助けていなければ、命すらも危なかっただろう。
「あたしは、力が欲しい。大切なポケモンを、人を、故郷を守れるように」
「……それなら、ここにいればいいよ」
 話を黙って聞いていたユッカが率直に言った。
「ここは、所謂「剣じゃなくてペン」、むしろキーボードって感じだけど。あなたが考えてる力とはちょっと違うかな?」
 少女は少し考えてから言った。
「ううん、それでいい。どっちにしろ、暴力で打ち勝てる相手ではないから」
「よし、決まりだな。早速ポワルンがいそうなところを探すよ。で、名前、だな」
「名前……アフラ。北サクハ系、天(あま)の民」
 彼女、アフラの紹介を受け、チャービルとユッカは、カラジにしたとおりの自己紹介をした。カラジの時が初めてと言っていたが、最後にチャービルのつっこみが入るのも全て台本どおりらしい。
「こっちは」
「僕はタイピングの王者、カラジ! 情報のことなら任せて。十三歳」
「なーんかいまいち、語呂がなぁ……」
「悪かったな」
 チャービルはけたけた笑い、小さなテーブルの真ん中に手の甲を突き出した。
「こういうの、してもいいんじゃないか?」
 その手に、まずユッカが手を重ねる。そしてカラジ、最後にアフラと続いた。
「ヒウメパソコンクラブ、ここに完全始動!」
「おーっ!」

キーボードを力にかえよう

「おい! お前ポワルンをっ」
「これはお前のポワルンではないな。必ずや、私が持ち主のもとへと届けよう」
「そんなことができるか」
「なんでもありのこのご時世、できてしまっても不思議ではないな」
 薄橙色のマントに身を包んだ青年は、そのままフライゴンに乗って飛び去った。

<一の記憶・了>

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