朝、チャービルがメールボックスを調べた時に、その喜ばしいメールは届いていた。
「アフラー、やったよ!」
「えー、なにー?」
 アフラはまだ眠たいらしく、口を塞いであくびする。
「ポワルン、見つかった!」
「え」
 その一声に、目はぱっちりと開いた。

 空白の地

「本文は……「明日、クオン遺跡にて待つ」って……クオン遺跡!?」
 カラジは、その「クオン」という地名には見覚えがあった。記憶をたどると、それはチャービルのノートで見た地名と一致した。
「え、でも、クオンっていったら、チャービルのノートで空欄になってた……」
「ああ。なんてったって、謎の場所だからな。ヒウメからも見えるけど、いつも砂煙があがってて……」
「こっわー!」
 ユッカが身を震わせた。
「ユッカが来たのは、確かそこからじゃなかったか?」
「……え、それ、ここで言っちゃうの」
「もういいだろ」
 カラジとアフラの二人には、何のことを言っているのかわからない。二人は口を尖らせた。
「あー、待て待て、話す。ユッカは、シラミツ島ってとこ出身なんだけど、変な連中に連れられてクオン遺跡に来たんだと」
「変な連中?」
「うん。みんな髪が白かったってこと以外はわかんなかったけど……」
「間違えて連れられたみたいで、すぐにそいつらは手放したみたいだけどな。ヒウメの北にいたから、事情を聞いて、オレが拾った」
「何それ、人を捨て子みたいに!」
 ユッカが高い声でチャービルに言う。次にカラジが口を開いた。
「で、両親はどうしてるの?」
「連絡済み。老夫婦が預かってます、っていう設定で。さすがに子供だけでこんなとこに暮らしてるって言ったらダメかなって」
「だからってそんな設定……」
「はい、この話終わり。明日のこと考えようぜ」
 チャービルは無理矢理話をしめくくった。
 カラジにはまだ訊きたいことがあった。ユッカが間違って連れられたというのなら、彼らが本当にさらおうとしたのは誰だったのか。

 あっという間に一夜明け、四人は作戦通り、「装備」を身につけた。とはいえ、ゴーグルとマントをつけただけではあるが。
「よし、それじゃ乗り込むぞ。クオン遺跡はたまに砂嵐が吹くから、大丈夫だと思ってもゴーグルは外さないこと!」
 チャービルが先頭に立ち、四人はフードをかぶってヒウメの狭い道を北に歩いた。
 やがてコンクリートの道は砂の先に消える。
「……さて」
 チャービル、それからタネボーとエネコが辺りを見回す。エネコが自分より前を歩き、用心棒となっていることに、カラジは不安を隠せなかった。だが、これも作戦だと割り切って、弟を見守った。
「ううー……それにしても風が」
「しっ!」
 チャービルの一声で、四人は押し黙る。
 岩の向こうに、二人の人影が見えた。

 人影は四人の子供に気がついたようで、赤茶色の瞳を光らせた。

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