Episode 1 -島とラティオス-
div class="novel">
ラティオスとカグロは、ひたすら東を目指す。
めまぐるしく変わる景色の端に、今まで見たこともないような、不思議な光がちらついた。
(あれは……?)
カグロは視力2.0の目をこらして見た。
ラティオスに似た、なめらかなライン。分厚い翼に尻尾。
「ラティオス、ちょっと戻ってくれないか」
それを聞いたラティオスは、すぐさま旋回する。
カグロは、あのポケモン――見間違いでなければルギア――を、もう一度探した。
ルギアは、もうそこにはいなかった。
「くぉー?」
「ああ、気にしないでくれ。そうだ、ラティオス、あそこの港町に降ろしてくれないか? イッシュはまだ遠いし、もう疲れたろう」
「くぉー!」
ラティオスに別れを告げ、カグロは、“地図にない町”と呼ばれるこの町をひととおり散策した。
なごやかな人々とポケモンたち。それに、時計台を中心とした、ユニークな町並み。
そういったものが、カグロを楽しませた。
カグロは心の赴くままに歩き続け、郷土料理のレストランの前で足をとめた。
メニューが書かれた看板の横に、ポスターが貼ってあったのだ。
“ニュートラルポケモン発見”
そのポスターには、CGであろうが、キングドラとニドキングが描かれていた。
その2匹のポケモンが放っている不思議な光に、カグロは見覚えがあった。
「ルギア……」
カグロは思わずつぶやいた。
この光は、ここに来る時に見たルギアらしきポケモンが放っていた光にそっくりなのだ。CGの効果だけだとも思えない。
カグロはベンチに座り、すぐさまポケギアをインターネットに接続した。
“ニュートラルポケモン”で検索をかけていると、こんなものにありついた。
投稿者:ED39
内容:一緒にニュートラルポケモンを探してくださる方を募集しております。
私はポケモンの生物学について研究しており、雑誌記事でこれらのポケモンについて興味を持ちました。
地元民・他地方民を問わず、共に探索してくださいませんか?
もし興味のある方がいらっしゃいましたらメールをください。
なお、メールをいただけた時点で、この書き込みを削除させていただきます。
あるサイトの掲示板であった。投稿時間は5分前だ。
「……こんなことが」
カグロはすぐさまメールツールを開き、書かれていたアドレスを宛先にメールを書き始めた。
アドレスは“neutral”ではじまっている。同行者を募集するためだけのメールアドレスなのだろう。
内容:はじめまして。とりあえず、SPANと名乗らせていただきます。
僕は今日、ニュートラル・ルギアらしきポケモンを上空で発見し、そのまま“地図にない町”にいます。
同行者募集の記事を見てメールさせていただきました。
ニュートラルポケモンについては僕も興味があるので、よろしければお願いします。
手を震わせながら、カグロは送信ボタンを押した。
返信を待つ間、そのポスターが貼ってあったレストランでお昼を食べた。
やがて返信が来た。
内容:あなたに決めました。どうぞよろしくお願いします。
大陸に着きましたら、また連絡させていただきます。
(やった)
カグロは思わず、小さくガッツポーズをした。
ニュートラルポケモンを探す旅。その響きが、カグロの冒険心に火をつけた。
⇒NEXT