Episode 10 -砂漠のミステリープレート-


 エデルはあてもなく歩き続け、もやがかった地にたどり着いていた。
「ルー、どこ……」
 蜃気楼で、向こうの岩が揺れて見える。その時、岩の後ろからポケモンが飛び出してきた。サンドパンだ。
 サンドパンは、まず“すなあらし”を起こした。
 エデルは、地面タイプの技がきかないカモネギで応戦する。
「うっ……」
 今にも倒れそうな主を見て、カモネギは自分で考えて戦略を立てる。“すなかけ”をかわし、“つばめがえし”で倒した。レベルはそれほど高くない。
 続いて岩場からはサイドンが出てきた。エデルは力なく、キマワリを繰り出す。
 砂嵐が強くなる中、カモネギが飛び、砂嵐を吹き飛ばした。太陽を見たキマワリは、光を吸収し、“ソーラービーム”を放つ。
 サイドンも倒れ、砂嵐も少しずつ収まってきた。エデルは息を整える。
「どうしてこんなに……」
 カモネギがエデルに寄り添うが、エデルにはそれが見えていないようだ。キマワリは何かを感じたらしく、後ろを振り向いた。
「キマッ!」
 キマワリは、そのポケモンに渦巻く、炎と草のエネルギーを察知したのだ。
 四番目のニュートラルポケモン、ゴローニャが、こちらを向いていた。

 □

 シャーマンによって連れられた場所は、草地であった。
 たくさんの大石が草地に刺さっていて、円を形成している。
「なんか、いいな。お、ポケモンもいる」
「ピィにスターミー……どことなく星を連想させるポケモンだな」
「ええ。ここは昔、天体観測所として使われていたと云われているの。そして、もう少し下に視線を移すと」
 カグロはシャーマンの目の先を追った。そこには、砂漠で見たものに似た石版があった。
「これは!」
「そう! ミステリープレート・ベータよ」
「ここにも……ってステラ、何してんだ」
 ステラはいつのまにかカグロの隣を離れ、ピィやスターミーたちと戯れていた。
「だってこいつら可愛いんだもん! あ、そうだ、ロトも一緒に遊ぼうぜ」
「昔から、人々はここに天体観測目的で来ていたから、ポケモンたちも人々に危害を加えないの。って、待って、そのポケモンは!」
 シャーマンは、ステラがボールから出したロトに言った。
 ロトは急いで、ヒゲを整えてかしこまる。
「ああ、こいつはコロトックのロト! で、何か?」
「コロトックっていうの? このポケモンならきっと、この技が使えるわ! “ストーンクラッシュ”っていうんだけど」
 シャーマンに言われ、ステラもミステリープレートを見た。すっかり懐いてしまったピィやスターミーたちもそれに続く。スターミーたちはきちんと列に並んでいたが、ピィたちはそんなものお構いなしだ。
「ポケモンがそっとこのプレートに手をつくと、覚えられるわ。もっとも、それはこの石版を読み解いて、技名がわかった時だけだけどね」
 早速、ロトは右腕でプレートに触れた。
「ストーンクラッシュ!」
 シャーマンがそう言うと、プレートは小さく光った。
「成功か?」
「うん。これで技を覚えたはず」
「やった! ロト、ストーンクラ……」
「待って。この技は使うべき時がある。それまでは使わないで」
「え? まぁ、そう言うなら」
 ロトはしょんぼりした。近いうちに使えるから、とステラがはげますと、またいつもの明るい表情に戻った。
「じゃあ、次の目的地に向かうわよ! そっちの坊ちゃん、あなたのポケモンにも協力してもらうからね」
 そう言われて、カグロは無言で頷いた。
 ピィは手を振り、スターミーはくるくる回って、一行を見送った。

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