Episode 11 -地底の透明-


 あそこだ、いやあそこは通じない、と、地底探検隊はせわしなく辺りを回っている。
「そういえばカグロ、シャーマンのねーちゃんと別れる時、気になることがある、って言ってたよな。あれ、なんだ?」
「……これ」
 カグロは、ポケットから紐を取り出した。
「これ。紐についてる、六角形のくぼみ。川でネオラントにエネルギーが宿った時に、俺の靴に入ってたんだ。……やっぱり、見ればみるほど似てるな」
 言葉足らずであろうと、カグロが何を言いたかったのかはすぐにわかった。ステラは、首にかけていた時のかけらを外した。
「紐の感じが、これと全く同じだな。くぼみに何かをはめて、首にさげたらそっくりじゃね?」
「そう。だとすると、ステラはニュートラル・キングドラからもらったものだから、俺もこれがニュートラルポケモンと関係しているんじゃないかと思って」
「なるほど。でも、川からってことは、やっぱりルギアが海から働きかけたんじゃないか?」
「ああ、その線もあると思ってる。とにかく、これはくぼみしかない。だから、これにはまるものを探さなきゃいけない。大地の裂け目、どう考えてもこの辺りでは一番大きな遺跡だ。海底遺跡で時のかけらが手に入ったみたいに、これにはまるものはここで見つかるんじゃないか、と。前にお前が言っていた、“三つのかけら”のことも気になるしな」
 カグロはそう言って、また紐をポケットにしまった。前というのは、ステラがカグロとエデルに再び会えた夜、ニュートラル・キングドラについて話した時のことだろう。
「やっぱり、こういうのが見つかるのは、最深部、だよな! 急ごうぜ」
 ステラははりきって下って行ったが、その道は間違いであったことがわかった。
「お前に任せるんじゃなかった……」
「まぁ待てって。ここ、まだ誰も見てないっぽいぞ。何かあるかなー。……ん?」
 ステラは、ようやく暗闇に慣れてきた目で、辺りを見回した。何か視線を感じる。
「ロト、暗闇はお前の方が向いてる。頼む」
 ステラはロトを繰り出した。ロトも何かに気がついたようだ。
「トック、トーック」
「ステラ、真正面!」
「えっ?」
 そこは化石がたくさんある部屋で、まるで時間が逆戻りしていくかのように、化石が自己復元をはじめたのだ。
「な、なっ? アリかよ、こんなん! に、逃げるのか? バトルか?」
「できるだけ逃げる! それで、駄目ならバトルだ!」
 カグロはそう言って部屋を出た。オムナイトやカブトが、侵入者を追う。
 ステラはカグロの方を向く直前、あの不思議な光が視界にちらついて見えた。
 時間が止まった。
「カグロッ! ニュートラルポケモンがいる! カブトプスだ!」
「は?」
「見てみろって! ……ついでにネオラントを出してくれると嬉しい」
(お前たちかっ!)
 声がまた、脳に直接響いた。
(地底湖を汚したのはお前たちか)
「待ってよ! オイラ、なんも知らねー! ひぃ!」
 ステラとロトのもとに、空気のカッターが三つ飛んできた。
「“エアカッター”か? ちょっと違うような……」
 岩の力、水の力、雷の力を持ったカッターであった。正真正銘のニュートラルポケモンだ。
 ニュートラルポケモンは自分たちの味方ばかりではないと、ステラは悟った。だが、さっきのカブトプスの言葉も気になる。
「応戦だ、ロト! あれ、カグロ、カグロっ?」
「頼んだ! 俺は地底湖に行く」
 後姿のままカグロは行って、道を下っていった。
「マジかよっ!」

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