Episode 11 -地底の透明-


 カグロはひたすら、底を目指した。鼻をまげるような悪臭が広がる。
 光のない世界。さすがに、地底探検隊もここまでは来ない。
 一つ大きな段を、とん、と下りた時、カグロはポケモンの気配を感じた。v  暗闇でじっとしている、そのポケモン。
「ノコッ……」
 カグロは言いかけて、思い出して口を塞いだ。ノコッチもカグロに気づいたらしく、カグロに“へびにらみ”した。
 そのまま、尻尾で穴を掘り、逃げ出した。
「畜生っ……」
 ノコッチは人間に見られるのが苦手だ。すぐに麻痺状態にしてしまう。
 カグロは何もできず、暗闇の中痺れに耐えていると、普段は自分からは出てこないネオラントが、自らボールから出てきた。
「ネーオ!」
 ネオラントは優しく水を吹き、輪にしてカグロに纏わせた。
「“アクアリング”か」
「ネオラーン」
「ありがとう。少しましになった」
 笑顔で主人を見るネオラントは、暗闇に輝く一番星のようであった。

 □

「戻りました」
「うむ、ご苦労」
 シャーマンは、木の壁にもたれた。預言者の手持ちである、イーブイの進化形のポケモンたちが、それを真似た。
「一つ気になることがあるのですが」
 シャーマンは、一人の少女と一匹のポケモンを自分の力で見つけることができなかったことを話した。
「なるほど。それは恐らく、ミラージュスタジアムの仕業だな」
「ミラージュスタジアム?」
 預言者は、持っていた羽ペンを机に置いた。
「蜃気楼のその先にあると言われているスタジアムだ。心に迷いがある者は、永遠にそこをさまよい続けるという」
「永遠に?」
「まぁ、迷いがなくなれば容易に出ることができる。それにあそこは、心優しいゴローニャがいると云われているしな」
「知りませんでした……」
 シャーマンは杖を専用の場所に置いた。杖は、しゃん、と鳴った。
「だが、そのゴローニャは、人にまだ迷いがある状態でミラージュスタジアムから脱出させる。確かに出ることは命を守るという意味で大事なのだが、その後その人は迷いを引きずり続けることとなる……」
「……」
 シャーマンは、三人とポケモンたちの行く末を案じた。

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