Episode 12 -再確認-


「さて」
 エデルは、以前のようなきつい視線を向けず、あくまでも平静を保った。
「……しょうがなかったのよ。私には生活が」
「あなたとブルーに何があったのか、今のわたくしには興味がありませんわ。ただ、このブルーは、今後わたくしのポケモンになる、ということに同意していただければ」
 女性は何も言えず、ただ頷いた。
 エデルはルーを女性に渡す。
「ルー……“にがす”」
 そう言って、女性はルーを放した。これで、このブルーは野生のポケモンだ。
 エデルは、黙ってスーパーボールを出す。そして、勢いよくボールを投げた。
 少しの間揺れたのち、ブルーは、ボールにおさまった。

 その間、ステラとカグロは冷や汗を垂らしながら二人と一匹の動向を見ていた。
 これから女性がとる態度といえば、そのままどこかへ去ることだろう。そのくらい、二人にも予想がついた。
 それはエデルも同じだったようで、わざと大きな声で、
「そうですね。このブルーに名前をつけましょう」
 と言った。
 女性は踵を返したまま、そこに立ち止まった。
「あれ、でもエデルってポケモンにニックネーム、つけなくね?」
「何か考えがあるんだろう」
 エデルはボールから、ブルーを出した。
「そうね、“ルー”。これがいいわ。一番似合う、素敵な名前」
 女性は、少しだけ振り向いた。エデルは笑顔で、女性に話しかけた。
「ですよね?」

「はー。エデルもなかなかチャレンジブルだよな」
「いつだってそうですわ」
「見てるこっちの気持ちも考えてくれよ! オイラがされたら耐えらんねーよ……」
「でしょうね」
「だろうな」
 エデルとカグロは、同時に言った。
「……ぷっ」
 ステラは我慢できず笑い出す。二人とルーも、笑い出した。
「さて、楽しい楽しい冒険の話、だな!」
 エデルの番になった時、パニックになったポケモンについてエデルは少し触れた。
「でもなんで、あのポケモンたちはパニックだったんでしょうか? それに、急に攻撃を止めて」
 カグロは、それを聞いてすぐに、それはエネルギーの暴走のせいであり、パニック状態でなくなったのはニュートラル・ホウオウによるエネルギーバランスの修正があったからであるとわかったが、その時それを話すことはしなかった。

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