Episode 13 -神殿への切符-


「多分ここだな。なんだこれ?」
 ステラたちがたどり着いた場所では、スタジアムを表すモンスターボールのマークが黄色く光っていた。また、青い光をまとった無数の球が浮かんでいて、それに顔を近づけると、不細工な丸顔に映った。
「エネルギー体……か? ミラーボールみたいな形だな。ネイティもじっと見ている……」
 ポケモンたちも、これが何なのかよくわかっていないようだ。
 ステラは球体に触れた。ゼリーのようなつるりとした感覚がする。
 視界の隅に、金髪の女性が見えた。女性は何かを探しているようだった。
「クロバットー! どこー? あ、君たち、クロバット! 見なかった? すっごくスピードが速くて……」
「見ましたけど」
 カグロはさらりと答えた。ステラが肘でカグロを突っつく。
「おいカグロ」
「だってあれ、クロバットだろ。スピードが速いって。それに、温泉で見たあの技……」
「“グランドクロス”ですね!」
 その女性は、カグロの両手をとった。カグロは両手をとられたままたじろぐ。
「私はこのへんで遺跡ハンターをしている者です! はー、いいですよね。不思議な輝きを持ったクロバット、憧れですぅ。私にとっては伝説の鳥ポケモンよりも素敵!」
「やっぱり、伝説の鳥ポケモンが」
「何か言いましたか?」
「いえ、何でもないです」
 ハンターの女性は何かを感じたのか、空を仰いだ。その時にカグロの手を放したため、やっと解放された、とカグロは密かに思った。
「んー、もう、このへんにはいないわね。追いかける術もないし……残念残念」
 これが長年の勘というものなのだろうか。ステラたちが空を仰いでも、クロバットの気配が感じられるかどうかすらわからなかったが、恐らくいないということなのだろう。
「あなたは遺跡ハンターなんですよね? ではあの神殿が何か、わかりますか?」
 辺りをよりゆっくりと見回したエデルが訊ねた。
「ああ、あそこね。さっぱりよ。不思議な力で、扉は堅く閉ざされてる」
「そうなんですか……」
 神殿の後ろには、雪をかぶった“神秘なる山”がそびえている。カグロは、神殿に行きたいということだけ二人に伝えていた。いまだ真の目的は、カグロしか知らない。閉ざされているとなると、それを開くために何かしらの行動をとらなければならない。
「そうだ、私のホームタウンに来ない? 村とすら言えないくらい小さいけど……私の発掘物コレクションがあるし、ぼんぐり職人だっているよ! またクロバットが来るまでだけでも、ね!」
「このあたりにはあまり人が住んでいないようですが、ここからの距離は?」
「近いよ! あの峠越えて、すぐ」
 三人は、そこに行けば扉を開く術がわかるかもしれない、という考えが一致した。
「よし、峠越えるぜ! 温泉入って、元気度マックス!」
「あ、坊や、そっちの道は危ないわよ。どんな優秀なトレーナーでも歯が立たないポケモンがごろごろと」
 ステラはそう言われて、ブレーキをかけた。それから遺跡ハンターが指した道には、人が通った跡がついていた。
 ハンターの後ろにカグロとエデルがついているのを見て、ステラは急いでその後ろについた。
「こ、こここここは慎重にだよな! いくら元気度マックスといえどもな!」
「せっかちなんだから……」
「オイラからしたら、カグロとエデルもせっかちだぞ!」

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