「おや、おかえり。そちらはお客さんかな?」
木の匂いがする薄暗い小屋には、立派な髭を蓄えた老人がいた。遺跡ハンターは三人を掘りごたつへ促す。
「そうでーす! クロバット探してたら拾っちゃいました! 可愛いでしょ」
「可愛いって……」
カグロは遺跡ハンターの性格ににいまいちついていけず、ため息まじりにそう言った。
「せっかく来てくれたんだ、ぼんドリンクでも出そう」
「私出すよ! いつものでいいよね」
遺跡ハンターの女性は厨房へ行き、冷蔵庫から緑色の飲み物を出した。
「ぼんぐりから作った、ぼんドリンクだよ! こっちが人間用、でこっちがポケモン用、どうぞ」
「いただきまーす!」
ステラは一気に飲み干したが、そのあまりの苦さにむせてしまった。それを見たカグロは恐る恐る飲み始め、表情がやや歪んだ。エデルは表情を変えないように、手で口を強く押さえていた。
「ははっ、まずいだろう。慣れると美味しいんだがね。健康にいいんだよ。ポケモンたちは美味しいみたいだねぇ」
五匹のポケモンたちは、それぞれにぼんドリンクを味わっていた。
「み、水……」
「あら、やっぱり? ここは水も美味しいわよ」
遺跡ハンターは、続けて水を出した。
三人が少し落ち着いて、遺跡ハンターは自分のコレクションを見せ始めた。
彼女の家もあるのだが、この老人の家の方が長く傷まずに保存できるため、老人に預けているのだ。
「ほら、見て! 大目玉よ。ちょっと欠けてるけど、小さなフリーザー像! 掘り出したの。昔このあたりでは、伝説の鳥ポケモンへの信仰があったというから。今じゃずっとお留守だけどね」
「へー、すげー」
「神殿も閉ざされ、鳥ポケモンたちもいない、と」
「そうなの。戻ってくることを信じてる人たちもいるんだけど」
「なるほど」
彼女のコレクション披露会はそれで終わった。
ステラは、老人に目を向ける。
「じーさん、何つくってんだ?」
「モンスターボールだ。ぼんぐりは、様々な可能性を持っていてな」
「モンスターボール! 近くで見ていいか?」
「ああ、火傷しないようにな」
ステラはそちらへ行き、興味深そうに作業場を覗いた。その時前かがみになって、“時のかけら”が老人の視界に入った。
「そ、それは!」
「え?」
老人が“時のかけら”のことを言っていると気づいたステラは、かけらの先を指でつまんだ。カグロとエデルも老人のもとへ行き、かけらを見せる。
「三つ揃っているとは! 目が悪くてな、わからなかった。それがあれば、扉が開く」
「え?」
「お前さん、ぼんぐりは持っているか?」
「……持ってる!」
ステラは、市場でボランティアの女性から貰ったぼんぐりケースを出した。
「よし、かけらを少し貸してくれないか? 力を与えよう。ここ最近の混沌のせいで、力が落ちている」
この老人は、遺跡ハンターの発掘物の保存状態をを見る限りだと、充分信頼できる。三人は“かけら”を渡した。
「お願いします。混沌というのは?」
「俺が話す」
今こそ話す時だと思ったカグロは、ルギアとスイクンから聞いたことを語り始めた。
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