Episode 15 -帰還-


 セレビィは、そのままステラの脳裏に働きかけ、映像を映し出した。
 映像は、幼い頃の、ステラとロトとの出会いから始まった。
 スラム街で母と二人貧しい生活をしていたステラと、間違って船に乗ってしまい知らない土地に着いてしまったコロボーシはすぐに意気投合した。
「オイラたちのグループに入れよ。お前もいれば、もっといっぱいモノ盗めるぞ」
「コロロ……」
 母はもとから病弱であったから、ステラはスラム街の他のグループから金品や食べ物を盗んで生活していた。
「盗んじゃだめって言ってるでしょ」
「でも、それじゃ生きられないよ」
 毎日、母とはそんな会話を繰り返し、そこで途切れていた。
 ステラたちのスラム生活を終わらせたのは、あるサックス吹きであった。
「このテナーサックスをあげよう」
「さっくす……?」
「この町には活気が足りない。都市の人間もスラムの人間も冷めている。それにこれは、金にもなる。メンテナンスはしっかりするんだ」

 ステラは港にサックスを吹きに行き、それでチップを集めた。チップは靴の中に隠した。
 母がサックスケースを作ると約束して、それが出来た頃、きれいなマンションの一部屋を借りられるくらいのお金が溜まっていた。
 そこで二人と一匹は、グループ内で特に親しかった者だけに静かに別れを告げ、夜中にスラム街を抜け出した。
 その日の夜明け、ステラは丘へ登って独りサックスの練習をした。
 その、まだまだ拙いサックスの音を聞いて、あるポケモンが祝福の炎をあげてくれたのだ。
 そのポケモンは、祝福の炎をあげ、そのまま西の空へと……

「そんな」
 セレビィの映像はそこで終わった。セレビィはそのまま、どこかへ去っていった。
「そんな! あの人は」
 ステラは神殿のほうを振り返った。いつの間にか、男性はいなくなっていた。

「今でもサックスを使っていてくれて嬉しく思う。大きくなったな、ステラ」
 ステラの見えない場所で、男性はぼそりと呟いた。

 ステラは雪を踏み、山を登った。
 そして、ミラクルソフィアを見つけた。
 ミラクルソフィアに“時のかけら”をかざすと、“サンダーフォース”という言葉が脳裏に浮かんだ。サンダーを呼ぶ言葉だ。
「サンダーフォース……」
 同じ頃、中央の頂ではカグロが、東の頂ではエデルが、同じく脳裏に浮かんだ言葉を唱えた。
 フリーザーフォース、ファイヤーフォース、そして、サンダーフォース。
 力を解放した直後、ミラクルソフィアと同じ色をしたポケモンたちが、三方から飛来した。

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