絆橋を散歩中、ダンボールに入ったポケモンを見かけた少女は、そのポケモンに手を差し伸べた。
そのポケモン、ブルーは、手をとろうとはしない。
「“拾ってください”って書いてあるのよ。わたくしはエーデルワイス。わたくしの家に来たら、生活で困ることはないし、美味しいものをいっぱい食べさせてあげる。興味があれば、バトルやダンスをする環境だって整っているわ」
エーデルワイスと名乗った少女は、ブルーに目線を合わせて言う。ブルーは、そっぽを向いてしまった。
(困ったわ)
一度逃がされたポケモンなら、本能のままに野生にかえることだってできる。
だがこのブルーは、それすらできそうにない。
(もしかして)
エーデルワイスは、もう一度笑顔になって、言った。
「わたくしと、友達になってくださらない?」
ブルーは顔をあげた。
「ともだち」
ブルーは、エーデルワイスの顔と手を見比べ、恐る恐る手をとった。
ドレイデン家。
3の島に本家がある、由緒正しい家だ。
先祖代々医者で、タマムシ大学の携帯獣学科を卒業している。
13歳の少女エーデルワイス・ドレイデンもそれに続くべく、タマムシ大学への入学を目指している。
そんな彼女の大豪邸に連れられた時のブルーは、玄関で五分間は硬直していた。
「さて……あなたも、由緒正しきドレイデン家のポケモンです」
そう言って、彼女はスーパーボールを出した。
勢いをつけて、ボールを投げる。だが、確かにブルーに当たったはずなのに、ブルーがボールに吸い込まれることはなかった。
「あら、どうして……?」
予想外の出来事に、エーデルワイスは驚きを隠せない。
ブルーも全く抵抗しなかったはずだ。
その後、別のボールを投げたり、時間をおいてもう一度試したりもしたが、それでも成功しなかった。
「不思議なこともあるものね……いいわ、それでもあなたとわたくし、もう友達なんだから!」
ブルーは苦笑した。
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