Episode 4 -こうして三人は出会う-


「なあ、エデルはどこから来たんだ?」
「ナナシマにある、3の島ですわ。“おやこじま”とも呼ばれているの」
「ナナシマ……?」
「ええ。カントー地方の近くよ」
「ああ、カントー! それならオイラもわかる」
 二人は古びたベンチに腰掛け、お互いのことを話した。ロトとルーも仲良くなったようで、一緒にぼんぐりを転がしている。
「でも、ここに何の用で来たんだ? 特に観光地化もされてないし、エデルみたいな……その、オジョーサマが来るようなところじゃないと思うんだけど」
「雑誌の、ニュートラルポケモンに関する特集を読んで、いてもたってもいられなくなって」
「ニュートラルポケモンだって!?」
 ステラは思わず腰をあげた。
「それ! それそれ! オイラも昔見たポケモンを探すために旅してんだ!」
「本当ですの?」
「ああ! それに多分、ニュートラルポケモン! そんで、ルギアッ!」
「ルギア……そんなポケモンまで? わたくしが雑誌で読んだのは、ニドキングとキングドラが目撃されたってことだけで」
 そこでエデルも立ち上がった。水溜りにはまって泥だらけになったルーを抱き上げ、タオルで汚れをふき取ってやる。
「ねえ、よかったら、あなたも一緒に旅しない? 元気なあなたが一緒にいると、きっと楽しい旅になりますわ」
「いいのか?」
「同行者の人さえ、良いといったら……。そういえば、そろそろ待ち合わせの時間ですわ」
 エデルは腕時計を確認した。
「えーと、相手の特徴は、あかがね色のバンダナ……きっとあの方ですわ!」
 エデルは森の入り口――と人間が呼んでいるだけだが――から、少しずつ大きくなる人影を指した。
 ステラはその人影に見覚えがあった。
「あなたがSPANさんですか?」
「はい。ということは」
「わたくしはED39、本名はエーデルワイス・ドレイデン。エデルとお呼びください」
「……俺はカグロ」
 よろしく、と二人は握手を交わした。それからエデルはステラの方を振り向いたが、そこにステラはいなかった。
「ステラ、ステラー? どこにいるのですか?」
 エデルが呼ぶと、ステラは木陰から顔だけ出して言った。
「覚えてるぞ、イヤミ野郎……!」
「ああ、お前、あの時の」
「るせー! 何だよあの態度、マジで苛立ったんだからな!」
 エデルが不安げに二人を見つめる。
「特に意味なんかない。あの時は長旅で疲れていたんだ」
「あ、あの、二人の間に何があったのか、私は知りません。でもカグロさん、ステラはこの大陸に住んでいて、しかも幼い頃にニュートラル・ルギアを見たことがあるんだそうです」
 カグロは目をむいた。ニュートラル・ポケモンなど、本当に最近あがってきた話題なのだ。
「にわかには信じがたいが……興味あるな」
「何だよその言い方。エデル、悪いけど、こいつとはソリが合う気しねー」
「そんな。あなたがいるととっても助かるんだけど……そうだ、ご飯はわたくしが作りましょう」
(ご飯)
 その言葉がステラの耳に残る。いつもろくなご飯を食べていないステラにとって、良家の子女が作るご飯は魅力に溢れているのだ。
「ほ、本当に、作ってくれる、なら」
「俺の意見は無視か」
 ステラとエデルは、カグロの方を向いた。エデルがすまなそうな顔をする。
「まぁ、いい。お前、このあたりの地理には詳しいんだろう? とりあえず、市場に行こう。それから考えて、どうしても嫌なら、一人で行動すりゃいいさ」
「……わかったよ」
 一行は、東の市場に向かった。

⇒NEXT