Episode 5 -海底遺跡-


 海底遺跡。
 謎の大陸の最南端に位置する、かつて高度な文明が栄えていたと思われる場所だ。
 地殻変動に伴う地盤沈下によって、広大な土地は文明もろとも海底へ沈没してしまった。

「ネオラント、“ダイビング”」
 ステラたち一行は、カグロのネオラントの力で、ある一つの門の前に達することができた。
 昨晩、はじめて野宿の経験をしたエデルはよく眠れなかったらしく、ステラたちが見ていない間に目をこする。
「すっげーな。この門とか、きれいに残ってるもんなのな」
「すごく興味をそそられますわ」
 三人は、ネオラントの身のどこかにつかまったり、手を置いたりしている。“ダイビング”が続く間はこうしていないと、息ができなくなってしまう。
 ステラが、おそらく大理石で造られたであろう門を触っていると、明るい光が目の端をちらついた。
「……どうしたカグロ?」
 それは、カグロとネオラントにとっては一番いやなポケモンであった。
「……ランターン!」
 ランターンは、光を強め、攻撃の姿勢に入る。
「キマワリ! お願い!」
 エデルのキマワリが応戦している間に、ステラは辺りを見回した。
 ランターンの光の先には、洞窟らしきものがあった。あそこだ!
「よし、こっちに逃げ……ってわー!」
 キマワリの攻撃が終わるやいなや、一行はステラの示した方向にものすごい勢いで流されていった。
「どーなってんだこれー!」

 洞窟に足を踏み入れる。
 お疲れ様、と言って、カグロはネオラントをボールに戻した。
 エデルもキマワリを戻す。水タイプには有利とはいえ、あまり光の入らない場所では、キマワリは元気そうには見えない。
「さっきのは何だったんだろう……ワープしたみたいだった」
「恐らくは、そういうエネルギーでしょう」
「えねるぎー?」
 ステラとカグロは、エデルに注目する。
「ええ。雑誌のニュートラルポケモンの記述にも、“自分の周りに渦巻くエネルギーの気を読み取り、そのエネルギーと同じタイプになれる”とあったわ。“同じタイプになれる”ものとはまた違う種類のエネルギーが、この大陸にもあるんじゃないかって。例えば、攻撃をした後にすぐどこかへ瞬間移動するエネルギーとかね」
「なるほどなぁ……」
「“とんぼがえり”みたいだな」
「ステラ、そういうエネルギーを感じた経験はない?」
「んー、ないなぁ。少なくとも“地図にない町”にはそんなもんないと思う」
「そう。エネルギーもまだまだ見つかる可能性はあるし、いつ何時何が起こるかわからないわ。覚悟はしておきましょう」
 まだまだ、この大陸は謎だらけだ。

 海底洞窟の中にも、遺跡は広がっていた。
 すれ違うポケモンのほとんどが水タイプで、多くは一行に興味を示さなかった。
「おーい、こっちこっちー!」
 ステラは、岩場にのぼって、二人を呼ぶ。
「速ぇんだよ……少しは落ち着いたらどうだ」
「落ち着けるかよ! 冒険だぞ冒険!」
 カグロがため息をつくと、ステラの乗っている岩場が揺れだした。
「わっ、わわわわ!」
「ステラ、あなたが乗っているのは、どうやらポケモンみたいですわ!」
 そう言ってエデルは後ずさりしながら、青ざめた表情で岩場の端を指す。
 すると、そのポケモンも顔をあげた。

「ハガネール、だな……」

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