Episode 6 -大樹と森の番人-


 森の中を走り抜ける何かに、ラフレシアたちは眠りをさえぎられた。
 彼らは不思議そうに、何かが走り抜けた方角を見る。
 しばらくして、それが戻ってこないことがわかると、また眠りについた。

 みっともね。
 みっともね。みっともね。
 ステラは、森の泉に着くまで、心で何度もその言葉を唱えた。
 泉に、醜い顔をした自分が映りこむ。首からさげていた“時のかけら”が水面をつつき、その顔は歪んで見えなくなった。
「キングドラァ……もう行き先がわかんねぇよ……どうしてくれんだよ……」
 ステラは、溢れそうになる涙を必死でこらえた。
 孤独でいるのが耐えられなくなって、ステラはロトをボールから出した。
「一緒に寝てくれるか?」
「トック」
 ロトは静かにうなずいた。

 朝。
 野生のヤドンに水をかけられ、ステラは目を覚ました。
「お前なー。起こしてくれるにしても、もっと他に方法があるだろ?」
 ステラはヤドンをなでて、立ち上がった。
 ロトはもう起きていた。ステラの顔を見ると、すぐにステラのもとへ戻ってきた。
 そして、何かを訴えるようなまなざしで、ステラを見つめる。
「ん? どうしたロト」
「トーック! トーック!」
 コロトックはステラの胸元を指す。
「えっと……って、ない」
 ステラは手探りし、それから目で確認する。ずっと首からさげていたはずの“時のかけら”がなくなっている。
「……なんてこった」
 “時のかけら”は、ある意味ステラのアイデンティティとなっていた。ニュートラル・キングドラと意思疎通ができたという、 その事実はステラに勇気を与えていた。
「探さないと」
 ステラとロトは、さらに北を目指すことにした。

 ポケモンに盗まれたのか、人間に盗まれたのか。それすらわからなければ、探すあてもない。
「どうすればいいってんだ……」
 ステラはたまらずロトに言った。
「ルギアにとっては、オイラなんてちっぽけな存在だよなぁ……覚えてなくて当然の。そう考えたら心が軽くなったっつうか…… ハハッ」
 ステラは笑おうとしたが、ロトはすぐに空元気だとわかった。
 なんとか元気付けようと、ロトはステラがよくサックスで吹く曲を奏でた。
「はげましてくれてんのか?」
「トーック」
「ありがとな……」
 ステラはロトを、軽く抱きしめた。

 そこに、ヤドキングが通りかかった。
 ヤドキングはステラを見て、北西を指差した。
「あっち、ってことか?」
 ヤドキングはうなずいた。
「何で知ってるのか知らねぇけど……行ってみる! ありがとな!」
 ステラたちが向かった先は、さらに深い森となっていた。

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