「いたーっ!」
森の最深部にかなり近い場所で、ステラは目の前のウツボットを指差した。
ぼんぐりの森とは正反対で、こちらの森はひたすら静か。ステラの声は森中に響きわたった。
「お前か、ドロボー!」
そのまま身一つでウツボットに突進する。ロトは主人の思いもかけぬ行動に驚き、不安そうにステラを見つめる。
だがすぐに、目の色を変え、ステラを追い始めた。
ウツボットはステラに気づくと、持っていた“時のかけら”を口に入れようとする。
「ダメだーっ!」
ステラはウツボットに飛びかかり、それを力ずくで奪い取る。そしてもう盗られないように、左腕にぐるぐる巻いた。
“時のかけら”の輝きは、少しも衰えてはいなかった。
「……ふう」
力を抜くとサックスの重みが戻ってきて、ステラはそのまま後ろ向きに倒れた。
ウツボットの唾液に触れたところがヒリヒリ痛む。
「やべー、サックスが……」
ステラはすぐに起き上がり、サックスケースの泥をはらう。
「って、え」
気づいた時には、他のウツボットやウツドンたちがステラを囲んでいた。
ステラの頬を冷や汗が伝う。ロトは主人の前に出た。攻撃の体勢だ。
「ロト、オイラのことはいい! 無茶はやめとけ!」
ステラはロトをボールに戻そうとしたが、それは叶わなかった。
ウツボットたちが、一斉に“眠り粉”をふりまいたのだ。
「ロ……ト……むにゃ」
ステラの身体から一気に力が抜け、その場に倒れこんだ。
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