Episode 8 -あの時のぬくもり-


 また、足跡は三人とポケモンたちの分となった。
 次は、西海岸にある、クレーターの中の村を目指すことにした。このあたりでは、大地が裂け、古代遺跡が多数発見さ れている。ニュートラルポケモンがいるかもしれないということだ。
「ハラへったー」
「お昼はまだですわよ」
 ステラのお腹が、ぐうと鳴る。
「やべっ」
「もう少しですわ」
 一行は小さな橋を渡った。
「あっ、川あるじゃん。カグロのネオラントが“なみのり”でもしてくれたら、オイラたちすぐ行けるんじゃない?」
「川が西海岸まで続いていれば、の話だがな……」
「ちぇーっ」
 カグロのネオラントは、モンスターボールの中とはいえ、そろそろ水が恋しい時期であった。
 そのため、一旦休憩をとることになった。
「エデル、お昼」
「まだですわ」
「わざと?」
「いいえ?」
 そんな会話を交わしている二人のすぐ側で、カグロのネオラントは水浴びをはじめた。カグロも靴を脱いで、足だけ川 につける。
「気持ちよさそー」
「服が汚れないかしら」
「足だけなら大丈夫だって! おーい! オイラもまぜろよ!」
 ステラも靴を脱いで川へと向かう。その時、川の水が逆流しはじめた。
「え……?」
 水は不思議な形を成し、ネオラントにまとう。
「ネーオラーン!」
「げっ!? な、流され……がぽぽ……」

 気づいた時には、その川から遠く離れた場所にいた。
「結局わたくしもびしょぬれです……」
「この力、ネオラントだよな? どうしたんだ、ネオラント」
 ネオラントは動かない。全身しびれているようだ。
「ネオラント!」
「あ、これ、あれじゃね? 前言ってた、エネルギーがどうのーって」
 ステラは持っていた靴から水を落としながら言った。カグロの靴は少し離れたところに見える。
「そうですね! 恐らくそうでしょう」
「どういうのだ、これは。ネオラントの攻撃力が倍、いや、三倍くらいになったが」
「単に攻撃力をあげるものなのでしょう。痺れがエネルギーのせいなら、すぐに治りますわ」
 エデルが言っている間に、ネオラントは痺れがなくなり、カグロに笑いかけた。

「あれがさっきの川のどのあたりかがわからない。これは迷ったな」
「どうしたもんかなーこりゃ……」
 ステラは、視力5.0の目をこらして、あたりを見回す。どこも荒野で、遠くに山が見える。
 と、そこに、ものすごいスピードでかけていくポケモンの姿を見た。
「あれは確か……」

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