ステラがそちらに向かおうとした時、カグロとエデルが追いついた。
「ちょっと、待ってくれよ! これじゃ意味ないって……」
「勝手な行動はよせ」
カグロにごもっともなことを言われ、ステラはたじろいだ。
「湿地ばかりで、走りづらいですわ。それに湿気も。……そうだわ。キマワリ、出ておいで!」
エデルはキマワリを繰り出す。
「“にほんばれ”! 太陽の光をいっぱいもらっておきましょう」
キマワリは大きく深呼吸をする。ステラはその間も、ロトが示した場所を凝視していた。
すると、崖の上に、あのポケモンが歩いているのが見えた。
「あ、あれだ、あのポケモン!」
「キマー!」
ポケモンは、どうやらキマワリに反応しているらしい。崖から降りて、次はこちらへ向かってきた。
「あれは……」
「カグロ、わかるのか? オイラ知ってるけど忘れちゃった」
「エンテイ……」
エンテイはそのまま、キマワリのそばをかすめて走った。
すると、キマワリが燃え上がった。
「キマワリ!」
一番早くに気づいたステラが駆け寄ったが、キマワリにダメージはないようだ。
あたたかい炎だ。
「この炎……」
炎は、すぐに消えてしまった。
「キマー!」
キマワリはもう一度深呼吸をして、日差しを強めた。
「もういいですわ……くらくらで……」
カグロはエンテイの後姿を見送った後、近くで水溜りが蒸発していくのが見えた。
「そういえばこのあたり、やけにぬかるんでるな。雨続きだったんじゃないか?」
「わたくしたちが来た時は曇りでしたよね。エンテイ、キマワリの“にほんばれ”に喜んでくれたのかしら……」
「キマワリはより力がみなぎってる。あの炎、エネルギーなんじゃないか?」
「なるほど。よかったわね、キマワリ! ……あら? ステラ、どうしました?」
ステラはキマワリの炎が消えてから、何も喋らず立ち尽くしていた。
炎のぬくもりを一番感じられた右手のひらを見つめる。
「知ってる」
ステラはぼそりと呟いた。
「炎だ。オイラが昔会ったニュートラルポケモンは、炎タイプ……」
カグロとエデルが驚いた。ロトは、はてそうだったかと、首をかしげる。
その時、ステラのお腹が、ぐうと鳴った。
「あ……あは! そういえば」
「お昼にもちょうどいい時間ですわね。あの峠、さっきから少し人が通っているみたいだし、峠を越えれば次の町に行けるでしょう。このあたりでお昼休憩ですわね」
「やったー!」
ステラたちは、エンテイを見たという共通の経験について、お昼に喋りつくした。
クレーター村までは、もうすぐだ。
⇒NEXT