Episode 9 -私の居場所-


「むむっ?」
 占いの結果に、預言者は眉をひそめた。聴衆はつばを飲み込む。
「近いうち、少なくとも十日以内に……大地は再び裂けるだろう!」


 クレーター村は、あれからすぐだった。
 このあたりは砂漠地帯で、村はオアシスを兼ねているようだ。
「あ、あの飯屋うまそーっ! 晩はあそこにしようぜ!」
「ステラ……さっきお昼を食べたばかりですよね?」
「だってー。ここ、なかなかいいとこだと思うけど、やっぱり、これが足りない!」
 そう言ってステラは、町の中心、オアシス付近まで走っていった。
「ハーァイ! 東海岸のアイドルスター、ステラ君のお出ましだぜ! サッソク・サックス・いっきまーす!」
 ステラはサックスを出して陽気に吹き始めた。少し立ち止まる人もいて、チップもそこそこ貰ったが、いかんせん人が 少ない。
「ここ……絶対もっと人、いるよな?」
「皆大地の裂け目を見たいんだろう」
 ステラの疑問に、通りすがりのおじさんが答えた。
「大地の裂け目?」
「ああ。ここから北東の大地は、昔裂けていて地下に文明が栄えていたという。預言者が、再び裂けるだろうと、昨日預 言したばかりでね」
「なるほどー。なぁなぁ、村を一通りまわったら、オイラたちも行ってみようぜ!」
「やっぱりか……まあ、興味はあるな」

 次は村のはずれ、野生ポケモンの居住地に行ってみた。
「ステラ、ちょっかいは出すなよ」
「わかってるって」
 そのあたりには、ヤシの木がたくさん生えていた。まるでリゾートホテルの庭のようだ。
「あ、ツボツボだ、めっずらしいなー……あっちではニャースが昼寝してる!」
「捕まえないのか?」
「オイラ、ボール持ってない。カグロもだろ。あ、エデル、見てみろよ!」
「え? あ、野生のブルーですね。ほら、ルー、ブルーですわよ」
 ルーはそれをちらりと見て、それから力ずくでエデルの腕から這い出た。
「待ってルー、どうしたの?」
 ルーは突然、何かから逃げるように走り出した。ステラはエデルを止め、オイラが行く、と言い、ルーを追った。
「ルー!」
 その逆方向を歩いていた女性が、ふっと振り返る。
「ルー……?」
 その女性の声を、エデルは聞き逃さなかった。
「……あの」
 エデルは、その女性に向かってつかつかと歩いた。立ち止まって、疑問を投げかける。

「絆橋にルーを置き去りにしたのは、あなたですか?」

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