最強チームとなりえるか


※公式キャラクター(サブウェイマスターの二人)が登場します。

 道中でもらったビラをさっと見て、きれいに畳んで鞄にしまった。
 ギアステーション前。そしてまた、深くを目指す。

「カグロさん……ですか?」
 ギアステーションへ踏み出そうとした時、どこかで聞いた声がして振り向く。太陽がちょうど南中する時刻で、視界が光で溢れた。
「あっ、カグロさんですね」
「お前は確か、シオン……?」
「はい」
 シオンは立ち止まり、深呼吸を一つした。
「カグロさんとバトルして以来、ずっとポケモン達と一緒に頑張ってきたんです。決して足手まといにはなりませんから、私と一緒に組んでいただけませんか?」
 シオンはやや不安げに、それでも真っ直ぐカグロを見て言った。
「……足手まといになるかなんて、バトルしてみないとわからないだろ」
「えっ」
「組むんだろ? スーパーマルチトレインでいいんだな」
「……はいっ!」

 スーパーマルチトレインのホームに行くと、ちょうど電車が止まっていた。カグロとシオンは、その電車に乗り込む。
 暗闇の鉄路を、明るい電車が走り出す。そしてすぐに、一戦目がはじまった。

「これで何戦……」
「あっ四十八戦です! ということは次が……」
 シオンがそう言うやいなや、わかりやすいシルエットが、二人の前に立ちはだかった。
「わたくし、サブウェイマスターのノボリと申しま……おや、ずいぶん久しぶりなお二人ですね」
「僕クダリ! 覚えてる? 僕は覚えてるよー前もこのコンビだったよね」
「ふふっ、お互い腕の立つトレーナーのことはよく覚えているもので……ならもう前口上はいりませんね。あなたたちの、ポケモンとのフットワーク……そしてトレーナー同士の息がぴたりと合わない限り勝利は難しいですよ。なにせわたくしたちも本気でいきますからね。ではクダリ、何かありましたらどうぞ」
「ポケモン同士のコンビネーションだって必要だよ! ぼくもポケモンたちも今日は本気でいくよー」
「……その通りですね。では……ルールを守って安全運転!」
「ダイヤを守ってみなさんスマイル」
ノボリの掛け声にカグロが答えた。ノボリは目をまん丸くする。
「何度も聞いたのでもう覚えました」
「アハハ。指差し確認、準備オッケー!」
「目指すは勝利! 出発進行!」
後には、クダリとシオンが続いた。
「発車しますよ、オノノクス」
「シビルドン、ゴー!」
 スーパーマルチトレインにおけるサブウェイマスターのパーティは無論研究済みであったが、いきなり倒しづらい二匹がきた。だが、こちらも初めに出すポケモンは決まっている。
「行くぞ、フリージオ」
「いきますよっ、ぬまぞうちゃん!」
 狭い車両を、ポケモンたちがさらに狭くする。
「ふむ、フリージオときましたか」
「さらにラグラージ、ね……見えたよ!」
 オノノクスもラグラージも“地震”を使うことができるが、場に浮遊ポケモンが二体。こうなると“地震”を使うこともなくなる。
「“凍える風”」
 凍てつく風が窓をも凍らすが、威力そのものは低い。カグロの狙いは、氷技が効果抜群のオノノクスにヤチェの実を消費させることだった。
「なるほど、それはヤチェの実の消費、それから“竜の舞”を見据えてのことですね……さすがです」
 オノノクスは“竜の舞”で攻撃と素早さを上げたが、“凍える風”を食らったせいで、次のターンもフリージオより速くは動けないだろう。
 さて次はラグラージか……と思いきや、シオンは何も指示を出さない。
「どうしたの? シビルドン先に動いちゃうよー?」
 ラグラージとシビルドンの素早さの差は小さい。ほんの少し指示が遅れれば、向こうの攻撃が先になる。
「それじゃいくよシビルドン、“でんじは”……」
「今ですぬまぞうちゃん、“地震”!」
「えっ!?」
 まさか使わないだろうと思った技を指示し、相手側は驚く。
「ぬまぞうちゃん、縦に! 縦にお願いします!」
「ラァグラー!」
「えっでもシビルドンは浮遊だし、ねっ! ……ってシビルドン!?」
「なるほど、カーブか」
 列車がカーブを通過する時、少し横に揺れる。シオンは、カーブを通過するタイミングを見計らって、ラグラージに指示を出したのだ。
「もういつカーブを通過するのか、覚えてしまいましたよ! ……ってこれ、私たちも結構目が回りますね……」
 縦に激しく、横にぐらぐら。身体がほぼ円形に近いフリージオは、なんとか車両の中央にいようと気をつけるが、身体が長いシビルドンは何度も電車に当たった。
 カーブの通過が終わると共に、ラグラージも攻撃をやめた。

「オノノクス、まだいけますね?」
「ノック!」
「シビルドンも……」
「シビー」
「やっぱり、そう簡単に倒せる相手ではありませんね」

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