地下に響く真実


 フレア団が動き出した。
 ザリストがフラダリカフェに入ると、すでに本棚を動かした後があった。本棚の向こう側にアジトがある。誰かが位置を戻し忘れたのか、それとも部外者の侵入を許したのか。
 どちらでもよかった、というか、ザリストに既に考える余裕なんてものはなかった。
 アジトの地下で、フラダリを見つける。なにか用か、とフラダリは振り返らずに言った。
そうだ、自分は何を言うつもりなのか。セキタイタウンだなんて聞いてない、か。あそこは、自分のホームタウンにして、ほんの少しの間、双子の妹と過ごした場所なのに。
「ボス、……俺は」
「ご苦労だったな」
「え」
 その声はザリストを労うというものではなく、ただただ、アジトの鉄筋コンクリートに冷たく響いた。
「“ギャラドスナイト”の回収。最終兵器の場所もわかったことだ、これさえあれば、私は理想を手にすることができる。……契約は本日限りだ」
「……え、何故ですか、ボス!」
「二度も言わせるな、今言ったとおりだ」
 フラダリは振り返り、ザリストの持つ巾着袋を取り上げた。中から、ヒャッコクシティでサメハダーが見つけた、三色に光る宝珠――“ギャラドスナイト”を取り出す。その後、巾着袋は返したが、ザリストにはそれを握る力が残っていなかった。

 フラダリの足音に、オーパーツがその場に飛び散る音がかぶさる。
 自分さえ良ければいいと思っていたのに。妹さえ見つかればさくっと契約を解除してやろうと思っていたのに。
 先に切られた? この俺が?
 ザリストは頭を両手で押さえる。最終兵器が動いてしまう。具体的にどういったものかは知らないが、嫌な予感しかしなかった。すでにこの場から去ったフラダリを思い出すと、寒気がする。
 その場にうずくまったザリストの前に、誰かが来て影が出来た。
「これは返してもらう」
 それはサルビオだった。サルビオは、さきの戦いで盗られた“プテラナイト”を探しだし、拾う。
「お前」
 ザリストはひどく低い声でサルビオを呼ぶ。しかし、その先が続かない。
「用がないなら帰るが」
「待て!」
 ザリストはサルビオの胸ぐらを掴んだ。はじめて会った時、プテラを隔てて向かい合った記憶がフラッシュバックする。サルビオの髪は、以前より少しだけ長くなっていた。
「八つ当たりか?」
「……」
 サルビオはザリストの手を払う。普段ならば力では絶対勝てない相手だとわかっていたが、今の行動に一貫性のないザリストとなると、話は別であった。
「皮肉なものだな」
「……?」
「こんなに近くにいるのに」
 ザリストははっとした。十センチほど身長の低い、サルビオの顔を、そして目を見る。目の色は自分と同じ、青みがかった緑色だ。コーストカロス北部の人間に多いと言う。
「……お前、ひょっとして」
「ああ。元の名はアイセルビア。お前の、双子の妹だ」


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