「こんな日も狙うなんて、パパラッチは大変ねぇ」
「こんな日でもハッピーを与えるのがアイドルの仕事じゃないのか」
「それもそうだけどね」
路地裏で見つけたカリアはいつも通りであった。元々サルビオが知っているのはアイドルとしての彼女だけだ、いつも通りで当たり前なのかもしれない。
「双子の妹」として生まれたことは同じなのに、兄の傍でアイドルとして輝ける、彼女のことが憎かった。というか、今でも憎い。
カメラを持って、言ってみる。
「やっぱ俺お前のこと嫌いだわ」
「なに、いきなり」
カリアは間髪入れずに返し、それからひとつ深呼吸をする。
「そんなこと、何度も言われてきたわ」
無意識的ななにかが、その時サルビオに訴えかけた。今だ、と。
人差し指をちょん、と動かして、シャッターを切る。切り取られたその一瞬は、アイドルとしての強さともろさが微妙に入り混じった表情だった。カリアは画面を覗き込む。
「……これは、あなたが一人で持っておくのがいいんじゃない」
「パパラッチを信用するなよ」
「あなたたちだって、私のこと信用してないくせに」
こうなってしまえば売り言葉に買い言葉だが、サルビオはその写真を、いつもとは別のフォルダに保存した。
○
最終兵器が動き出し、また太陽が昇って、ミアレシティやセキタイタウンが混乱に陥っていた頃、ザリストは瓦礫だらけのアジトで、一人の幹部に会った。
「落ちていたぞ」
「……どうも」
それは、彼にもらった“闇の石”だった。
「俺、もうフレア団じゃねーけどな」
「……やはりか」
「どういうことだ」
レンゴクは語り出す。フラダリ、あいつは理想のためなら他者を平気で切り捨てる、と。
「とくに、フリーのお前は切り捨てやすい駒だったってわけだ」
「……」
ザリストは、レンゴクの率直な物言いは嫌いではなかった。そういうことを言っておきながらフレア団の幹部であるということは、この男も過去に色々あったのだろう。
「逆に軽くなったんじゃないか」
ザリストはその言葉に、闇の石から目線を上げた。
「少なくとも俺には、答えはすでに出ているように見えるが」
まあこれは勘だけどな、とレンゴクは付け足した。
ザリストはフラダリに契約を切られてから、サルビオに双子の妹だと告げられた。そしてそれは、ザリストが長年求めていたことだった。ただ、出会いがあまりに唐突であっただけで。
とにかく、目標は果たされたことになる。あとは、この事実を、自分がどう受け入れるか、それだけだ。
「それじゃ、な」
レンゴクはザリストの背をコンと叩き、その場を去っていった。
青氷さん宅カリアちゃん、比呂さん宅レンゴクさんお借りしました。
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