ザリストは、傷ついた右手で、コードを伸ばす。外れたコンセントを付け直すと、パソコンの電源がついた。
「くそっ……スパイ、なめんな……」
重なり合った岩々の下には、ザリストがわずかにパソコンを動かせるだけの空間が残っていた。岩に完全に下敷きにされる前にギルガルドを出し、“キングシールド”を指示したのだ。
「すまん、ギルガルド、こんないきなり……」
ギルガルドは答えない。ただ、“キングシールド”は解除せず、岩の重みに耐えていた。
進化したばかりの相棒に応えるためにも、ザリストはフォルダを漁った。
「どこか……どこかで最終兵器と繋がっていれば……ん?」
それらしきフォルダを開くと、中には“最終兵器”に似た、硬質な花のような画像をアイコンとしたソフトが存在した。考えている余裕はない。ザリストはダブルクリックでソフトを起動した。
すると、右側に“最終兵器”の画像、左側にはいくつかのメーターが出た。メーターはわずかに上下している。
「これ……兵器に注入されたエネルギーか?」
クリックしても反応はないが、他に考えられない。すると、このメーターを空にしてしまえば、兵器が止まる可能性もでてくる。
それならば、とザリストは同じフォルダから何かが出てこないか探すが、その途中で、メーターが急に上に振りきれた。
「なっ……!」
○
既に大部分の瓦礫を町の端までやり、人やポケモンを助けていた時。“最終兵器”は、テルロたちにも聞こえるように、どく、と鳴った。
「え、どうした、まさか発動!?」
「……伝説のポケモンが目覚めた」
「は……」
カロスの伝説のポケモンといえば、主なところを挙げれば、創造を司るゼルネアスと、破壊を司るイベルタルだ。その二匹が、このすぐ下に眠っているというのか。
「なあ、サルビオ、これピンチじゃね」
「逆に考えろ。チャンスだ。お前、さっきフレア団に対抗する勢力が基地とやらに入った……と言ったな」
サルビオは“最終兵器”を見上げる。
「プテラ、“ゴッドバード”」
出てきたプテラは、あの時のように“メガシンカ”はしなかったが、同じように光を纏い始めた。
「ど、どゆこと」
「兵器にダメージを与える。一時的に兵器は力を増すかもしれないが、その対抗勢力が……伝説ポケモンを手なずけてくれたら」
「力が落ちるってことだな!」
「そうだ」
それなら、とテルロはドラミドロに指示する。
「お前の得意な“溶解液”あれに浴びせてやれ」
「ドラー!」
ドラミドロは、勢いよく毒液を兵器にぶつけた。それを見たポケモンたちが、一匹、また一匹と立ち上がる。中には、さっきまで瓦礫に埋もれていたポケモンもいた。
トレーナーたちも全力でサポートにつく。こんな時だ、何かで力になりたい。微々たるものでも、それが重なり合えば兵器にも勝てるはずだ。
「いっけー!」
ニンフィアやトリミアン、それからフラージェスとクレッフィも加勢し、兵器への一斉攻撃が始まった。
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