+ 第8話 精霊の丘のネイティオ +


 はやく……はやく 起きて……
 ねえ……リリーってば……

「……むにゃむにゃ」
 リリー……!!
「ハッ!」
 不思議な声にリリーは目覚めた。
 周りのポケモンたちは、ノアを含め熟睡している。東の空が白々と明けてきた。
「……誰だったんだろう?いつものサーナイトさんなのかな……」
 リリーは洞穴から外に出た。木々の擦れあう音と滝の音以外は、何も聞こえなかった。
「やっぱ気のせいだよね」
 リリーは、近くにあった道具を拾ってから、洞穴にもどった。
「朝だよう」
「うーん………リー……?」
「ノア。あーさだよー」
「あ。リリー、おはよう」
「おはよう、リリーさん」
 ノアとラフレシアたちが起きた。ヤミカラスは起きない。夜行性であるため、リリーが起きる少し前まで行動していたのだ。
「おはよう、ノア。おはよう、ラフレシアさん」
 リリーは、もう行く準備は万端であった。ノアに早く行こう、とせがむ。
「あら。朝ごはんは食べていかないの?」
「はい。木の実は貰いましたし、あまりお世話になるのもいけませんし、何より早く丘に行きたいんです」
「そう。じゃ、気をつけてね」
「おねーちゃん、おにーちゃん、ばいばーい」
「さようならー」

 リリーとノアは、でこぼこの道を歩いていた。ちょうど、崖と崖の間だった。
「狭いね……空がほとんど見えないよ……」
「あれ? あそこ、通れないみたいだよ」
 リリーが指差した方に、黄緑のかたまりがあった。サボテンのようだ。
「引き返そう」
 リリーとノアは、引き返そうとしたが、そのサボテンはこちらに向かってくる。
「ノ、ノクタスだあ!」
 その声と共にすぐにノクタスは攻撃をしかけてきた。
 今はノアが前にいて、リリーは後ろにいた。
 そこでリリーは、電光石火で応戦した。
「“火の粉”お! ついでにリリーの“電光石火”!」
「ついでって何よ」
 ともあれ、なんとかノクタスを倒すことができた。昨日のリリーに続き、今度はノアがレベルアップした。
「よかったあ! これでまた一安心だね」
 リリーはそう言って、ノアにオレンの実を投げた。

 その後、上から岩が落ちてきたり、接戦になったりもしたが、なんとか崖の間の道を越えることができた。
「あ、見えてきた、見えてきたよ、精霊の丘!」
「うん。もう少しだね」
 だがその安心もつかの間、向こうからヘルガーとケンタロスが駆けてきた。
「ここは通さんぞ!どうしても通りたければ、我らを倒すのだ!」
 その二頭は、どう見てもリリーたちより強そうだった。
「どっどうしよう……そうだ! リリー、“瓦割り”だ!」
「あ、そうか!」
 リリーは、“瓦割り”の技マシンを取り出し、自分にセットした。瓦割りは格闘タイプだから、ケンタロスにもヘルガーにも強いはずだ。
「いっけえ!」
「がはっ! だが、まだまだだぞ」
「“電光石火”!」
 相手が起き上がる前に、ノアが電光石火をくりだした。
「よおし、とどめの、“瓦割り”!」
「ぐほ! ……負けたよ。通っていいぞ」

 リリーとノアは、木の陰に隠れた、いい寝床を見つけたので、そこで寝ることにした。精霊の丘は、もう目と鼻の先だ。

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