+ 第8話 精霊の丘のネイティオ +


「これでやっと自然災害が起こる理由がわかるのかな」
「多分ね。あ、あのひとじゃない? おーい!」

 精霊の丘にたどり着いたリリーたちは、ネイティオを探していた。
「不思議な感じのする場所だね。お花の色とか、あまり見たことがない色だし……」
「うん。不思議な感じ。で、ネイティオさんは、どうして反応しないんだろう?」
「聞こえなかったんじゃないかなあ。よし、近くまで行ってみよう」

「おーい、ネイティオさーん」
「………」
「おーい!」
「しっ!」
 それまで黙っていたネイティオが、とつぜん言葉を洩らし、リリーたちは黙った。
「見えますよ……あなたたちの過去が、未来が……。リリーさん。あなたはどうやら人間のようですね」
「はい……そうですが……?」
「娘さんなだけあって、よく似ていますね」
「へ?」
「いえ、こちらの話です……」
「あの、ボクたちは、自然災害の原因を訊きたくて来たのですが」
「………」
 ネイティオはまた黙った。
 リリーもノアも、ここで喋ったら、また何か言われそうだと思った。
「ここに来たのならもう大丈夫でしょう。私に訊かずとも、自然災害の原因はわかりましょう」
「はあ……」
「安心して良いのですよ。ただ、これから大きな何かが、あなたを待ち構えています。気をつけるように」
「え? 私に大きな何かが?」
「はい。その時になると……あなたは人間であることを嘆き、怒りをおぼえるでしょう……。でも、強い心さえ持っていれば、絶対に大丈夫ですから……」
「人間であることを嘆く? 怒る? うーん。よくわからないけど、心はノアより強いから大丈夫だね!」
「なんだよ、ボクが弱いみたいにー」
 リリーは、ノアににやりと笑いかけた。ノアは不服そうに睨んでから、やはり笑い返した。
 その間に、ネイティオは自分の力で結晶を造った。リリーはそれに気づいて、ネイティオに尋ねた。
「あの、それは?」
「お守りです。あなたたちを守ってくれるでしょう。肌身離さず持っているのですよ」
 そのお守りは、透明感があってキラキラとしていた。クリスタルだろうか。
「わかりました。ありがとうございました」
 リリーはそれを受け取った。そのお守りには、紐がついていたから、首にかけた。
「それと」
 ネイティオは右手を出し、リリーとノアの持っていた救助バッジに手をのせた。ネイティオが手を上げると、バッジは銀色になっていた。
「ここまでよく来ましたね。そのごほうびですよ……」
 リリーたちは、銀色のバッジをまじまじと見つめ、歓声をあげた。
「やったあ! シルバーランクだあ!」

「ラッキーだったね。ネイティオさんの友達のケーシィさんに、峡谷入り口までテレポートさせてもらって」
「そうね。でも、自然災害の原因は、結局わからなかったね……」
「うん。あ、広場だ! 皆待ってるよ!」

 広場入り口に、広場のポケモンたちが皆集まっていた。リリーたちを迎えてくれるのか、と思ったが、皆深刻な表情をしていた。
「ただいまー」
「ねえリリーさん。本当なのですか?」
「え?」
 マダツボミに、帰ってくるなりそう言われ、リリーは戸惑った。
「ったりめーじゃねーか。こいつが、キュウコンの伝説に出てくる、悪ーい人間なんでよ!」
「なんだって!?」
 リリーは、ゲンガーのその言葉に耳を疑った。
「そう! 自然災害がおこっているのもリリー、あなたがここにいるからよ。あなたがいるから、世界が破滅するのよー! オホホホホホ!」
 そう言ったのはチャーレムだ。
「リリーさんって、優しいと思ってたのに、本当はそういうひとだったんだね。ぼくたちを騙して、最終的に世界を壊そうとしてるんでしょ?」
「この世界から出て行け!」
 いつも広場で仲良く喋るポケモンたちは、リリーにじわじわと近づいてくる。
「なんだよ! リリーがそんなことするわけないじゃんか!」
「ノア、あんたも騙されてるってことさ!」
 ハスブレロは、ノアに攻撃した。それを見た広場の皆も、ノアにくってかかった。
「やめて……」
 リリーは叫んだ。

「やめてーーーーーー!」

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