+ 第10話 群青の洞窟と岩の横穴 +


「“10万ボルト”!」
「“火炎車”っ!」
 リリーたちは、敵を倒すこと以外何も考えたくはなかった。
 敵を倒しても、仲間になることはなかった。
「よし、こっちはやったよ。ノアは?」
「こっちも倒せたよ」
「じゃ、進もうか」
 リリーとノアは、暗くなっていく洞窟をさらに進んだ。お腹がすいていたが、今は休んでいる場合ではないし、道具を節約しなければならない。リリーたちは早足で進んでいった。
 敵もそんなに強くはなかった。大いなる峡谷とほぼ同じ強さに思える。

「なんだ、もう終わりじゃん」
 群青の洞窟を抜けて、ノアが言った。
「……まだまだ終わりじゃないみたいだよ」
 リリーは近くにそびえる山を見て言った。“炎の山”だ。マグマが沸々と湧き出る音が聞こえ、自然災害のせいなのか他の山でも山火事が起こっている。
「……って、こ、これは怖いよー!」
「ノア……怖いのは私のほうだよ。ノア、炎タイプじゃん」
「でっでも……」
「待って!」
 リリーはノアの口を抑えた。
「あそこにいるぞー! 追えー!」
「待つのよリリー!」
 もう追っ手が来ている。リリーは急いで近くの洞穴に入った。

「思うんだけど、ボクたち、下り坂を歩いてない? 炎の山だったら、上り坂のはずだよねえ?」
「確かに……」
 リリーたちは道具を集めつつ、洞穴を進んでいた。
「あれ? もう出口だよ? 群青の洞窟の四分の一もなかったじゃん」
「おっかしーなー。地図見てみよ。 ……あ、ここ“炎の山”じゃなくて“岩の横穴”だった……」
「もう! リリー!」
 あの時はかなり慌てていたため、炎の山ではなく、すぐ近くの岩の横穴に入ってしまったのだ。
「とりあえず! 道具はそろったし、今度こそ山に行こう」
 リリーは山の入り口に入っていった。それにノアもついていった。

「あ、あいつら、炎の山に入ったわ!」
「あそこはまだ未踏の地……。俺やっぱ追いかけるのやめた!」
「……ではここからは、勇気のある者だけで追いかけよう」

⇒NEXT