+ 第11話 炎の山のカクレオン +


「お腹空いたな……」
「食料が全然落ちてないね」
 リリーたちは、“炎の山”で一番暑い場所にいた。しばらくは山の中を進んでいくことになる。
「ノアはマグマの上でも大丈夫だけど、私は……あちっ!」
 山にはマグマの道もたくさんあった。リリーがマグマの上を踏むと、すぐにやけど状態になるのだ。
「まただ! はいっ」
 ノアはリリーにチーゴの実を投げた。リリーはそれを受け取って食べた。
「ありがと。さっきまではノアのほうが怖そうだったのに」
「うーん、中に入っちゃえば大丈夫みたい」
 リリーは、ノアの声が聞こえはしたが、返事はしなかった。空腹で目がまわってきたのだ。
「うーん……」
 そのまま、リリーは倒れてしまった。ノアも空腹で、助けてあげる余裕はなかった。リリーはやっとの思いで目をあけると、前にぼうっと赤く丸いものを見つけた。
(り……りんごだ!)
 ノアはその場にもう一つあったりんごに気づいたらしく、リリーたちはりんごを食べた。
「あー、おいしかった」
 リリーたちはまた山を進もうとした。だが、その時どこからか甲高い声が聞こえた。
「ドロボーだ! ドロボーだ!」
「へっ?」
「店の品物盗んだ! ドロボーだ!」
「げっ!」
 いつのまにか周りの敵はカクレオンだけになっていた。リリーたちは、知らない間に泥棒をしていたのだ。二つのりんごは店の品物だったらしい。
「逃げろー!」

「運が、良かったね……『ワープだま』『しばりだま』が、あって」
「階段も、すぐ、見つかって、良かった。とりあえず、息の乱れを、何とかしよう」
 リリーたちは、昔ポケモン広場のポケモンたちから聞いていた、“カクレオンから逃げる方法”を実践した。
『カクレオンはいつもは愛想がいいけど店で泥棒をしたら伝説のポケモンより強い仲間たちを呼んで集団で泥棒をぶちのめすらしいよ』とのことだ。にわかには信じられなかったが、本当のことであるとここでわかった。
「あ、外だよ、外が見えてきたよ」
「あとは山頂を越えて、その向こうへ行こう」
 と、その時。どこからか鳥の羽ばたく音が聞こえた。そしてひらひらとリリーたちの前に紙がおりてきた。
 その紙はマグマに浸かりそうなところで、すかさずノアがキャッチした。どうやら手紙のようだ。“リリーさんとノアさんへ”とも書かれている。
「これは……?」

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