+ 第12話 おてがみ +


 リリーさんとノアさんへ

 今でも平和に暮らせているのはリリーさんとノアさんのおかげです ディグダ・ダグトリオより

 たとえどんなことがあっても挫けないで、前を向いていてほしい。また元気に手紙を届けられるようにね! ぺリッパーより

 伝説の話はわしも知っているがリリー、お前はそんなことをするやつじゃない。信じているぞ。 ナマズンより

 アンタたちはワタクシに勝ったんザマス! すぐにへこたれるんじゃありませんよ! エアームドより

 リリーさん、ノアさん、ごめんなさい。ボクはリリーさんがあんなことするなんて思いません。なのに、広場にいながら、皆をとめられなかった。本当にごめんなさい。でも、いつか必ず、もっと強くなって、チームRUNに入ってみせます! だから、それまでずっと救助隊を続けてください! キャタピー・トランセルより

「みんな……」
 リリーは、手紙をよんでその言葉をこぼした。
 そして空を見上げて叫んだ。
「届いたよ! お手紙、届いたよーっ!」
 ノアも同じく、火山灰の向こうのの青い空を見つめる。そして、相棒に向き直った。
「よし、リリー、行こう!」
「うん!」

「誰だ!!」
 リリーとノアの足音が誰かに気づかれた。リリーは硬直して、ノアは跳びあがった。
「フ、ファ、ファイヤー!!!」
「この辺りの自然のバランスがおかしいと思ったら……お前たちが荒らしていたのか! これは罰だ、“炎の渦”!」
「ぎゃっ!」
「ノア、ちゃんと避けてっ!」
 リリーはノアの手を引いて避けた。
「落ち着いて、ノア! あれをまともにくらったら、一溜まりもないよ!」
「うん……。 すー、はー、……ふう。なんか勘違いされてない? ボクたち……」
「なにをグダグダと喋っているのだ! もう一発……!」
 ファイヤーは、再度炎の渦を繰り出した。だが、何か見えないものにぶつかって、渦は跳ね返った。
「ちゃんと対策はしてるのよ。光の壁でね」
 リリーは、ノアと話している間に、しっかり“光の壁”を作っていたのだ。これでしばらくは安心して戦うことができる。
「“10万ボルト”!」
「ギャッ! すごい電撃ではあったが、まだ戦えるぞ!」
 リリーはとっさに、ノアのほうを振り向いた。そして合図した。
「……!! ……、………!」
「わかった!」
「何を話しているのだ! そろそろ“光の壁”も消えるころだな……ん!?」
「それっ!!」
 ノアは、近くにあった小さな岩をかたっぱしから蹴り上げた。そしてそこにリリーが電撃を放つ。電気をまとった岩が、スピードを増しつつファイヤーの方に向かう。
「!!!」

「ボクたち、勝てたのかな……?」
「いや、まだ動ける」
 ファイヤーはむくりと起き上がった。
 また怒らせてはならない。リリーはそう思った。
「待ってください。私たち、ここを荒らしに来たんじゃないんです」
「なんだと?」
「私たち、自然災害の原因をつきとめる為、こうして旅しているんです」
 実際はただの逃亡中であるのだが、原因をつきとめるためだと言っても支障はなかった。
「私たち、必ず原因をつきとめますから、どうかここを通してください」
「……わかった、必ずだぞ」

「すごいねボクたち! “炎の山”を突破できたよ! もう追いかけてくるチームなんてないんじゃないかな?」
「いや、まだ油断はできない。今もどこかで見られているかもしれないよ。たとえば、チームFLBとかね」
「そうだね。確かに、FLBなら楽々山を越えられるよね」
 リリーたちは、もう油断はしないと誓って、また北へ北へと歩き始めた。

 一方、チームFLBは、フーディンのテレポートを使ってファイヤーと戦わないルートを突破することに成功した。
 あまりテレポートを乱用するとフーディンが疲れるため、使い時を見極めなければならなかった。
「あいつら、ファイヤーを倒したぞ。どうやら本気みたいだな」
「でもやっつけるって約束したんだ。しばらく後を追って、一気に片付けよう」
「……」

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