+ 第14話 伝説のポケモンたち +


 リリーたちは、治まることを知らない雪の中を歩いていた。
「なんだか更に寒いところに着いちゃったね……」
「ヴォルガさん、本当に道は合ってるの?」
「ああ、ちゃんと合っている。目指すは“氷雪の霊峰”の頂上なのだからな。ちょっと地図を見せてくれないか」
 そう言われて、リリーは地図を出した。地図はかなり痛んでいた。
「今いるのがこの辺で……目指す場所はここだ」
「山まではあとちょっとだね。頑張ろう!」
 一行はまた歩き始めた。ノアは、地図に書かれている、消えかけの空に浮かんだ塔のようなものの絵を見逃さなかった。

 山まではすぐにたどり着いた。リリーとノアにとって、山を登ることはもはや苦ではなかった。ハガネ山、ライメイの山、炎の山と、個性的な山々を登ってきたのだ。
 一行は早速、野生ポケモンのコモルーに出会った。
「通してくれないなら、攻撃しちゃうよ! 10万……」
「待て」
 ヴォルガがリリーの攻撃態勢を止めた。コモルーは、ヴォルガが倒した。
 すると周りにいたポケモンたちは、ヴォルガに敬意を表した。
「どうぞお通りください」
 ポケモンたちにそう言われ、一行はここを通ることができた。
「あれ? どうして? みんなヴォルガさんを知っているの?」
「敬意を表しているのは、私にではなく、<世界の審判>に、だ」

 “氷雪の霊峰”は、広場の救助隊のポケモンたちはほとんど寄り付かない山だ。登山ルートなんてものは、山が発見されて久しいが、未だに存在しないのである。
 また、傾斜も非常に急であった。
「疲れた……でも、もうちょっと頑張るもんね!」
「ボクも頑張る!」
 どこかで、何かが転がる音がした。
「リリー! ノア!」
 ヴォルガがそう叫んで、リリーたちは上を見た。その叫び声すら、轟音にかき消される。
 何かの拍子に、大きな岩が砕けることなく流れてきた。
「大変だ! なんとかしないと下のポケモンたちが……! えいっ、“10万ボルト”!」
「“火炎車”!」
 リリーたちは、最大パワーの技を岩にぶちこんだ。だが、リリーたちだけだと、全ての岩の勢いを止めることはできない。
「どうしよう……」  その時、また、どこかで別の轟音が聞こえた。
「えっ?」
 これは岩の音とは違う。上からではなく、下から聞こえてくる。
「これだけ岩を止めてくれれば十分だ!」
 今の音は、風の音だった。ヴォルガの周りを、激しい風が吹いている。
「かまいたち!」
 風が、全てを覆い尽くすごとく勢いで、岩に向かった。
 そのとてつもない威力に、リリーたちは思わず伏せた。
「全ての岩は砕けた」
「ヴォルガさん、すごい……」
 下のほうでワァっと歓声があがった。山のポケモンたちだ。
「……」
 この歓声はヴォルガに宛てられているのはわかっている。だが、リリーは優しい気持ちになった。

「フリーザー様、失礼します」
 “氷雪の霊峰”の頂。不思議な空気が流れている。
 リリーは、下を見てみた。曇っていて、ポケモン広場周辺を見ることはできなかった。炎の山や、ライメイの山の頂は見ることが出来た。
 そして行ったことのない海や島もかすかに見えた。あそこはどんな場所なのだろう、と思い巡らす。
「なんだ!? 山を荒らしに来たのか!?」
 フリーザーが立ち上がった。凍りつくような冷気が突き刺さった。
「いいえ。私です。ヴォルガですよ」
「……ヴォルガとは、あのヴォルガか?」
「もちろんです」
「そうか、久しぶりだな。何のようだ?」

「この者たちを、“天空の塔”に連れて行ってやってほしいのです」

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