+ 第17話 すべてのポケモンの想い +


 精霊の丘のネイティオは相変わらずであった。一度黙ってしまうとしばらくは話せない。
「あのー、まだですかね……」
「うーん……」
「きえーい!」
「なっ」
 黙りこくっていたネイティオが声をあげた。
「あなたたちが望んだとしても、おそらくリリーたちに会うことは不可能でしょう……」
「そんなっ……」
「いえ、でも、見えますよ。彼女は、またここに来ると。どのくらい未来なのかはわかりませんがね……」



 天空の塔を上り始めて、結構な時間が経った。リリーたちは、中空と呼ばれる場所で一休みしていた。
「あれは……ポケモン広場かな」
「今はくっきりと見えるね。何人かは、こっちを見上げているみたいだけど……」
「私はもう準備できましたよ。全員の準備が済んだら、また行きましょうか」
「そうしよう、そうしよう」
 リリーたちはまた出発した。これから先のポケモンたちはもっと手強い。ノアはつばを飲み込んだ。
 リリーは、広場でずっと見上げているポケモンが気になって仕方なかった。あの紫のポケモンが。



 ポケモン広場ではすでに、リザードンとバンギラスによって、リリーの運命についての話が広まっていた。
「やっぱりゲンガーの言ってることは間違いだったんじゃないか! それ、やっちまえ!」
「ひいいっ!」
 ゲンガーは、広場にいた他の救助隊員に、袋叩きにされた。
「うっ……」
「やめろ」
 そう言ったのはバンギラスであった。
「この場にリリーとノアがいたら、「やめなよ」と声をかけると思うぞ。それにゲンガー、お前に倒れられたら困るのだ」
 バンギラスのその言葉を聞いて、救助隊はゲンガーへの攻撃をやめた。
「チャーレム、お前にもできるかもしれない」
「えっ? 一体何をというの?」
「リリーと共に自然災害をおさめることだ。心の中にこの星に近づいている別の星をよくイメージし、その星に念力を送るのだ」
 広場がざわめいた。
「フーディンは今、“氷雪の霊峰”の頂上でそれをやっている。ここでも、強くイメージすることができれば、星の落下スピードを少しでも落とせるかもしれない」
「なるほど。でもゲンガーがそんなこと、するかなあ?」
 だよなあ、やっぱりゲンガーはなあ、という声がもれた。
「……やってやるよ」
「え? ゲンガー……」
「ただしこれはリリーのためじゃない、自分のためだからな!」
「それでも充分だ」



「“10万ボルト”おっ!」
 リリーは、ボーマンダにトロピウスと、かなり腕の立つポケモンたちに参っていた。何度技を出しても、簡単には倒れてくれない。
 ノアとルナトーンとカゲボウズも、言いたいことは同じであった。
「強いよう、強いよう」
「もう私……ダメかも」
 ノアもかける言葉がなかった。ほとんど弱音を吐かないリリーが弱音を吐いたら、本当に絶望しか残らない気がするのだ。
「それ! 決定打だ!」
「うわっ……」
 リリーは目も開けていられなかった。そして、すぐに何も見えなくなった。

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