+ 第18話 最後の戦い、リリーの決意 +


「我が名はレックウザ」
 抑揚のない声が、あたりに響き渡った。神聖な“天空の塔”を守るポケモンだ。
「お前たち……ここを荒らしに来たのか!? 絶対に許さんぞ!」
 レックウザは雄叫びをあげた。戦いがはじまる。
「ち、違います!」
「ノア、なにを言ったって聞いてくれなさそうだよ。ここは戦おう!」

 ぶんっ、とレックウザがしっぽを振っただけで凄まじい空気の波がリリーたちを襲った。
「んぎゃあ!」
「よし、まずはボクが! 火炎車!」
 ノアがレックウザのしっぽを攻撃した。少しは効いているようだが、それでもレックウザは攻撃の手をゆるめない。
「私もいかなきゃ! 10万ボルト!!」
「ナイトヘッド! ナイトヘッド!」
「念力、よっ!」
 リリーたちも攻撃態勢に入った。全てレックウザにあたったが、レックウザはまだまだ戦えそうだ。
「ふんっ!」
 レックウザの技はどれも強い。今の技は“神速”だ。
「きゃあ!」
「リリー! これを!」
 ノアはすかさずオレンの実を投げた。リリーはそれを食べて、少しだけ楽になった。
「四対一なのに……どうしてです!? 歯がたちません!」
「おかしいよ! おかしいよ!」
 そうだ。リリーは思った。四対一なのに、一対一で戦っているような気がした。これはどうしてだろうか。
(……そうか!)
「みんな、集まって!」
 ノアたちは、リリーのその言葉の意味がわかった。
「そうか。ボクたちに足りていなかったのは……チームワーク!」
「そう! 仲間なんだから、ばらばらじゃなく一緒に戦わないと!」
「それで何かが変わるとでもいうのか?」
 レックウザはまた尻尾を振った。空気の波がやってくるが、リリーはもう恐れなかった。
「皆しっかりくっついていたから、飛ばされなかったよ! レックウザ、いくよ!」
「火炎車!」
「ナイトヘッド!」
「念力!」
「雷ぃ!」

 かえんぐるまの紅色、ナイトヘッドの闇の色が、ねんりきの空気の波にのった。そしてそこに、上から雷が落ちてきて、実に美しい色合いとなった。
「ぐおぉ……!」
 合体技はものすごく明るく光った。目もあけられないほどであった。

「負けたな。最後の技が素晴らしかった。だが我はおまえたちを許したわけではない! ここを荒らしたのだからな!」
「ちがいます、レックウザさん! この音が聞こえませんか!?」
 星の音が、空気を突き破ってこちらの星に向かう音が、大気中に響き渡っていた。
「もうすぐこの星に別の星が衝突するのです! だから共にその星を消してほしいのです!」
「そうだったのか……わかった。全力を尽くそう!」
 星はもうすぐそこまで来ていた。今までどうして気がつかなかったのか。
「でも、もう……間に合わない!」
 リリーはそう言いながらも、得意の電撃で向かってくる星に攻撃をした。
 それでも、あまり変わらなかった。少し削れただけである。
「もう……ダメなの? 嫌! そんなの嫌!」
 リリーがそう言うや否や、星の動きが一瞬、ふっとゆっくりになった。
 これはフーディン、チャーレム、そしてゲンガーの力であった。今、やっとここに届いたのだ。
「!? 迷ってる場合じゃない、技をぶちこまないと! 火炎車!」
「破壊光線!」

何度か、遠いところで爆発音が響いた。

 …………

(私、助かった……?)

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