+ 第2話 即席救助隊、初救助 +


 リリーとノアによる即席救助隊は、小さな森までの道を急いだ。
「ところでさ、君の名前、何ていうの? 聞いてなかったよね」
「え? リリー、だけど」
「へえ、じゃあこれからはリリーって呼んでもいい?」
「……うん」
「ボクはノア。そのまま呼んでよ」

 そう話しているうちに、小さな森にたどり着いた。
「よし、入ろう」
 森にはヒマナッツにポッポと、リリーも見たことがあるポケモンが多く住んでいる。
 ただ、どのポケモンも、皆リリーたちに気づけばこちらへ向かってくる。
「どっ……どうしよう!」
「リリー、焦らないで。仕事を分担しよう。ボクがヒマナッツを倒すから、リリーはポッポを倒して」
 ノアはリリーにそう言って、ヒマナッツ倒しに向かってしまった。
「えーと……技って、どう出すの? ピカチュウの技といえば、やっぱり電気ショック……バリバリって」
 そう言っているうちにも、ポッポはどんどん近づいてきて、リリーの腹を蹴った。
 弱いと思われないよう、その痛みに歯を食いしばって耐えたが、腹を抱えたままだと攻撃が出来ない。
「リリー、これを!」
 リリーの様子に気づいたノアは、リリーに向かって、カクレオンに貰ったオレンの実を投げる。リリーはそれをキャッチして食べた。みるみるうちに、力がみなぎってくる。
「リリー、ピカチュウの電気はほっぺにあるんだ!」
(ほっぺ……?)
 それを聞いたリリーは、頬に力を入れて、体内の電気を外に出した。
「ポッポーッ!」
 近くのポッポは、まだ力を制御しきれていないリリーの技を受けて倒れた。
「リリー、すごい!」
「ありがとう、ノア!」

 その後、キャタピーをすぐに見つけ、無事救助に成功した。
「本当にありがとうございますー。これでお母さんを助けてあげられます!」
「お母さんを?」
「ハイ。モモンの実、今日はお店に売ってなかったんで……。毒をうけたお母さんを助けるには、ここに来るしかなかったんです」
「そうだったの……」
 一行は、全員無事に森を脱出できた。
「リリーの電撃、かっこよかったよ。キャタピーにも見せてあげたかったよ」
「ノアさんもリリーさんも、充分かっこいいですー!」

 その後、キャタピーの母バタフリーは毒がぬけて、健康な体に戻った。しかしリリーには、一つ気がかりが残った。
「私はキャタピーを助けるために、たくさんのポケモンを倒しちゃったわ」
「へ?」
「キャタピー一匹助けるのに、罪のないポッポを倒してしまった……」
「あいつらは野生だから、いざとなっても自分で対処するんだよ。オレンやモモンもあるわけだしね。ボクたちにできるのは、野生でないポケモンたちへの、野生ポケモンによる一方的な攻撃を無くすこと。それだけだよ」
「うん……」
 リリーはうなずいた。
「ところでさ、リリー、こうなったら一緒に救助隊やらない?」
「え? 救助隊を?」
「そう。今日すっごく楽しかったから、これからもリリーと一緒にたくさんのポケモンたちを助けたいんだ」
「でも、私、にん……」
 そこでリリーは言うのを止めた。人間であるとわかっていても、記憶がないからだ。
 それなら、救助隊として様々な土地に行き、ポケモンたちと触れ合って、手がかりを集めてもいいかもしれない。
「……うん、いいよ」
「やった、救助隊だー!」
 ここまでが、リリーとノアの救助隊結成までの話である。彼らの過酷な大冒険は、また、次からの話にて。

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