+ 第3話 チームRUN +


 ポケモン広場の東にある、ペリッパー連絡所で、リリーたちは救助隊結成のための申請をした。
「はい、手続き完了です。これで、チームRUNが生まれましたよ」
「わーい!」
 救助隊の名前「RUN」は、リリーが考えた。走るという意味で、これから救助をする若い二匹のチーム名としてちょうど良いと思ったのだ。

 翌日、救助基地として登録した空き家のポストに、大きな箱が届いていた。
 救助隊スターターセットだ。救助バッジに、救急箱、ポケモンニュースの最新号が入っている。
 ノアは大はしゃぎであったが、リリーはそれらを見て疑問に思ったことがあった。
「で、肝心の救助依頼は?」
 ノアはバッジを振り回す手を止めた。冷や汗を垂らし、リリーの方にゆっくり振り向く。
「そっ、それは……しょうがないって、ほら、ボクら救助隊になったばかりじゃん!」
「来てないって言いたいのね。でも、確か連絡所前の掲示板には、救助隊が指定されてない依頼が貼ってあるんだって?」
「そうそう。それじゃまず、そこに行ってみよう」

 ノアは、依頼掲示板の一際目立つところに貼られた依頼を読んだ。
「『誰か 助けて! 相棒の コイルたちが いなくなりました! 助けてくれる 救助隊は ナマズンの池まで 来てください!』か。これとかいいんじゃない?」
「よし、ナマズンの池に行ってみよう!」
 ナマズンの池には、見知らぬコイルがいた。
「あの、あなたですか? この救助依頼を出したのって」
「ソウデス、ソレハワタシデス」
「ボクたちは、チームRUN! 救助隊なんだ。まだ新米だけどね……」
「オオ、シンマイサン! オネガイシマス、キット、ナカマ、“デンジハノドウクツ”イルトオモイマス!」
「“電磁波の洞窟”?」
「ねえ、これじゃない?」
 救助依頼の紙に、電磁波の洞窟までの地図が焦げ目で描かれていた。電気技で焦がして作ったようだ。
「すごいね、これ。君が作ったの?」
「ソウ、ワタシデス。デモ、ドウクツノナカマデ、ワカンナイ……」
「ここまで描かれてたら充分さ。洞窟の中は、ボクたちが探検するからさ。それじゃ、行ってくるね!」
 そう言ってノアはリリーの方を向いた。リリーはノアににこりと笑いかけた。
「オオ! タスカリマス!」

 依頼を受けたが、ノアにはコイルを見つける術はなかった。
 洞窟内をくまなく探検するしかない、と思ったのだが、リリーは余裕の表情だ。
「コイル探しね、カンタンよ。見てこれ。じしゃーくっ! これを振り回すと、きっと反応してコイルさんもやってくるわよ!」
「……じゃあ、やってみてよ」
 ノアは不信感を漂わせながら言った。リリーは、ノアの顔色は無視し、鼻歌を歌いながら磁石を高く揚げた。
「んなっ!?」
 しかしそれに反応してやってきたのは、エレキッド、プラスル、マイナン、ビリリダマといった、電気ポケモンたちだった。
「電気ポケモンはみんな来ちゃうんだ! 私ってバカ?」
「はぁ、まあ、反応しちゃったならしょうがない……。リリーも攻撃の手を緩めないで!」
 ノアは、向かってくるポケモンたちに石を投げてけん制した。
「う、うん」
 リリーとノアは、電気ポケモンの大群と勇敢に戦った。

「ねえ、ノア、さっき、飛び道具使ってなかった?」
「ああ、あれはゴローンの石っていうんだよ。すごく便利だよ」
「へえ……」
 そこで、突き当たりにたどり着いた。このあたりが最下層であるはずだが、コイルはいない。
「困ったなー。もう一回磁石揚げてみる?」
「それだけはやめて」
 そこで、隠れていたポケモンたちは、リリーたちの会話が救助隊が交わす会話だとわかった。
「ビビビ! ボクラハ、ココニイマス!」
「あっ! コイルさんたち!」
 コイルは二匹であった。ノアは、スターターセットに入っていた救助バッジを掲げ、コイルと自分たちを広場に送った。

 コイルは、リリーたちにお礼として“復活のタネ”を渡し、皆で仲良く帰っていった。
「今日も頑張ったなー」
「救助バッジって、あんな風に使うのね」
「ありゃ、説明書読んでなかった?」
 そこでリリーは、説明書は絶対読んでおくように、とノアに言われていたことを思い出した。
「……ア、アハ」
「リリーッ!」

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