広場で、リリーたちは久しぶりにFLBのバンギラスを見かけた。
バンギラスは、最難関ダンジョン“マグマの地底”から帰ってきたばかりらしく、他の救助隊からどんなところだったか、質問攻めにあっていた。
だが、バンギラスは、首を横に振るばかりであった。
「バンギラスさん、私からも聞いていいですか?」
ポケモンたちをかきわけて、リリーはその輪に入った。
「あ、ああ」
「世界の綻びって、知ってますか?」
「……」
バンギラスは何やら考え事を始めた。リリーは静かに返事を待つ。
「言葉は知らないが……あれは、そういうことなのかもしれない」
「どういうことですかっ?」
リリーはそれを聞くなり、勢いでバンギラスに訊いた。
「マグマの向こうに、何やら暗いものが広がっているように見えたのだ。ふと見ると、そこに吸い込まれる感覚を覚え、それからは目を逸らし続けたのだが」
「なるほど……」
リリーの後ろについていたノアが一歩出た。
「じゃあ、ボクが調べてきます」
「ノアッ! そんないきなり」
「大丈夫だよ。ボクならマグマの上を歩ける。それに、ずっと追ってたことじゃないか! リリーは怖いの?」
「こ、ここここ怖くないよ! ……って言ったら嘘になるけど、いいじゃない、マグマの地底! 綻びだって、探してたわけだし!」
リリーは一気に言ったが、それでも身体は震えだした。
ノアはそっとリリーを背中から抱きしめる。
「大丈夫。ボクも一緒にいるよ」
「ノア……」
震えは止まらなかったわけではないが、それでも少しましになった。
「と、いうわけで、私たち“マグマの地底”に行ってきます!」
それを聞いたカクレオンたちは、店に戻った。リリーが旅の準備をするとわかったからだ。
マグマの地底。“炎の山”の地下に存在する、灼熱地獄とも呼ばれる場所だ。
「入り口から熱いね……」
「うん。リリー大丈夫?」
「大丈夫! さぁ、入ろう」
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