+ 第11話 遥かなる主 +


 スイクンに示された方へ歩いていると、二つのトーテムポールが見えた。
 さらに地面には、角ばった石が並べられ、「遥かなる霊峰」という文字を形成していた。
 ここが入り口か、とすぐにわかり、リリーたちはここから登ることにした。

 ここでは、空に関係したポケモンが多かった。
 なんとなく、“天空の塔”が思い出される。
「あ、ソルロックだ! 気をつけて」
「大丈夫、ここはてまえにお任せを!」
 パッチールは、リリーとノアの前に立ち、ソルロックの前で伏せた。
「え……?」
 パッチールは攻撃してこない、と判断したソルロックは、攻撃の体勢に入った。と、その時、パッチールはソルロックを後ろから攻撃した。
「い、いつの間に!」
 ソルロックは、そのまま逃げてしまった。
「今の技は?」
「“騙し討ち”です。てまえも使えますが、タイプは悪。ソルロックには効果抜群、というわけです」
「へえ、悪タイプの技かー。いろんなタイプの技があると便利だね!」

「で、さっきから見るこの、トーテムポールって言うんだっけ。これは……」
 トーテムポールは、たまに、二つ並んで、その真ん中に小さな石段があるという形で見かける。登山順路を示しているのだろうか。
「トーテムポールには……今までこの大地で見た伝説のポケモンたちが彫られてるみたいだね」
「じゃあ、このてっぺんのマークはなんだろう……?」
 今まで何も言わなかったパッチールが、それを聞いてずいずいとトーテムポールに近づいた。そして、そのマークを凝視する。
「神様の、印ですね」
「神様の!?」
「はい。てまえが、故郷の大陸で、ある洞窟を探検していた時に見つけた印と同じものです」
 リリーは、もう一度その印を見た。雲のような渦が巻き、周りには堅そうなものが並んでいる。
 そしてパッチールの言葉。このあたりのポケモンだけに信仰される存在ではなく、ポケモンワールドの広範囲で信仰される存在なのだろう。
「ひょっとして、<世界の審判>?」
「そうですね。印は他にもありますが、一番よく見かけるタイプです。遺跡以外にも、例えばコースターに描かれていたりします」
 ポケモンでも、人間でもない存在。世界の綻びのせいか、声を聞くことも無くなってしまった。
「神様っていうのは、創造神も使いも皆ポケモンですが、<世界の審判>だけは特別ですね。むしろ、他の神様より目立っているくらい。創造神を印にするなんて畏れ多い、という考えからかもしれませんが」

 次に見たトーテムポールには、近くにポケモン――ポワルンがいた。
「あっ! その出で立ち……あなた方、救助隊ですか?」
「えっ……はい、そうです」
「見てください、これ」
 ポワルンは、すぐそばのトーテムポールを指した。それは、風化のせいで、伝説ポケモンたちの顔を判別できなくなってしまっているのだ。
「私としては、是非直したいのですが」
「素晴らしいっ!」
 パッチールは、ポワルンの手を取って言った。
「トーテムポールを守ること、すなわち夢とロマンを守ること。協力しましょう!」
「ほ、本当ですか?」
 その言葉に、リリーとノアも頷いた。

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