波はおさまった。ポケモンワールドについたのだ。リリーはそっとまぶたをあげた。
そこはポケモン広場。思い出の場所。
「ここ……やっぱりポケモン広場なのね!」
懐かしさをかみしめて、リリーは広場の中央に向かった。体はもちろんピカチュウになっている。何もかもあの時のままだ。
「あ、あいつぁ、リリーじゃないか!?」
「え? ほんとですー!」
はじめに気がついたのはハスブレロとマダツボミであった。それから、その声を聞いて、どこからともなくわらわらとリリーの周りにポケモンが集まってきた。
「ほんとうにリリーかい? 会いたかったんだよ!」
「私も、ずっと会いたかったです」
「あ、でも、ほんとうに会いたいのは……ノア君だよね?」
「……」
「ならさっそくだけどノアに会いにいってみてはどうかな? 今、ノアは“さわぎのもり”というところにいるから」
「えっと、そこは?」
「あ、ちょうど地図を持っているじゃないか。“さわぎのもり”はここだよ」
「わかりました、ありがとうございました! 私、ノアに会ってきます!」
あとでもっとゆっくり再会の喜びをわかちあおうと、広場のポケモンたちと約束した。リリーは、“さわぎのもり”の方向へいっきにかけていった。
わさわさわさわさ、わさわさ、わさわさわさ。
(何か落ち着かない場所だなあ……)
森に行くなり、リリーはそう思った。どこかで誰かが囁いている。
敵のポケモンがリリーの行く手をさえぎる。
「よし! まずは……10万ボルト!!」
バリバリバリバリ!
(そう……この快感! 久しぶり)
だが、あまりにも勢いが強すぎて、敵のポケモンはすぐに倒れた。
(ありゃ、ちょっとやりすぎちゃったか……)
リリーは頭をかいた。
リリーはさらに進んでいった。ふと、誰かの悲鳴が聴こえた。
「わぁーーっ!」
(あっちからだわ!)
リリーは声のするほうへかけていった。どこかで聴いたことのある声だった。
リリーは目を凝らして奥の部屋を見た。かつて見たことがないほど、大量の野生ポケモンが立っていた。
中に埋もれていて見えないが、救助隊か誰かがやられている。
(助けなきゃ……)
でも怖い。リリーは足がすくんだ。
(……<世界の審判>、どうか私をお守りください……)
リリーは心の中で祈って、奥の部屋へかけていった。
「いけー! 10万ボルトッ!!」
10万ボルトは、周りのポケモンたちを一気に攻撃できる技だ。
リリーは少し安心した。“さわぎのもり”のポケモンたちは、“てんくうのとう”のポケモンたちより少し力が劣っていたのだ。
「よし! 次は誰だー!」
「もういませんが」
え? もういないの? とリリーは思った。いつのまにか暴走してしまったらしい。
「ふう、よかったわ……って、あなたは!」
「え? 君は……リリー……」
リリーは、夢でも見ているのかと思ってしまった。ポケモン広場のポケモンたちと再会した時は、こんな風には思わなかった。これが、特別な友達というものなのだろうか。
「……ノア」
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