『お土産が二つあります。大きい箱と小さい箱、どっちをもらいますか?』
「もちろん、大きい箱!」
『好きなものには夢中になれますか?』
「ポケモンにはずーっと夢中!」
『それじゃあ、最後の質問です。君は男の子? それとも女の子?』
「……顔が見えていないの?」
『まあ、そんなものでね』
「女だよ!」

『色々答えてくれてありがとう。君は……とても素直な子だね。ちょっと素直すぎるかもしれませんが……それは君がこちらの世界を受け入れることを助けるだろう。さて……話が逸れたね。そんな素直な君は、

チコリータだ!』


+ 第14話*こんな時の友達 +


 どこか深い深いところにある、狭い一本道を、ひとりでに歩いているような感覚。
 しかも、妙に地に足がついているというか、そんな気分がした。
 やがで、彼女の視線の先に、二つの光が見えた。

「……まさか、リリーが負けたなんてな」
 その声に気がついて、目を覚ました。
「リ、リリー!? リリーどこ?」
「うわっ! なんだなんだ! ……目、覚ましたのか」
 その二つの光というのは、ゲンガーの瞳であったようだ。
「えっと、えっとえっとえっと」
「冷静に聞け。お前、もとは人間だよな? でも今は違う」
「え、……えっ!? は、は」
 ゲンガーからは、頭に葉を携えた黄緑色のポケモンにしか見えないが、この反応はまさしく「人間」のものだろう。
「チッ、チコリータに! そんでゲンガーがでかい! ゲンガーがゲン」
「冷静に聞けっつったろ! お前、リリーを知ってるんだな?」
「リ、リリー知ってる……」
「よし。それじゃ、リリーがポケモンワールドに来たという話は」
「……聞いた! そっかここポケモンワールドなんだ! でも、どうして」
「その、お前の友達のリリーが危険な目に遭ってるんだ。ここであいつに倒れられちゃ、世界が危ない。そこで、<世界の審判>が、急遽お前をここに呼び出した。まあ、オレは、お前に事情を説明する役として呼び出されたんだがな」
 オレの話はなんにも聞かないくせに、勝手なやつだ、とゲンガーは舌打ちした。
「世界が……?」
「ああ。これは人間とポケモンが共存する、要するに「そっちの世界」も危険になるってこった。だから、お前とオレで、リリーを助ける。“友達救助”ってやつだな」
「“友達救助”……する、私する!」
「いい返事だ。名前は訊いておいてやろう。オレはもうゲンガーでいい」
「わ、私は、キオ! これでも、れっきとした、人間です」
「知ってるっつったろ」

⇒NEXT