+ 第6話 願い星は流れる +


 “願いの洞窟”は、これ以上行ったことがないというくらい遠く、場所は南西であった。
 洞窟まではペリッパーに送ってもらうことにした。
 その道中で、リリーはアーボに言った。
「イジワルズにはイジワルズの冒険スタイルというものがあると思う。でも、今回は私たちのスタイルに合わせてもらうから」
「……」
「今だけ、チームRUNの一員だと思ってほしいの。一緒にチャーレムを助けるために」
「……わかった」
 リリーとノアは、にっこり笑った。

 “願いの洞窟”はなかなか深そうであったが、チャーレムは地下二十階でうずくまっていた。
 これからもっと攻略がきつくなりそうだ、と心配していた最中だったから、リリーたちは安心した。
「チャーレム、起きて。救助しに来たよ」
「う、うーん……って、RUNじゃないかよっ! って、ことは、ワタシはジラーチに会えなかった……」
「ジラーチ?」
「この洞窟の最深部にいるポケモンのことよ。そのポケモンが願いを叶えてくれるの。でも結局」
 チャーレムのその声を聞いて、アーボはリリーより一歩前に出た。
「いいじゃないか。リーダーのことは、また考えればいい。色々なことを試してみるより、今はリーダーの側にいるだけでいいんじゃないかって思うんだけど。あのゲンガー、意外と寂しがりだし……」
 アーボは、ふっと笑った。
「アーボ……そっか、そうよね」
 チャーレムはよろよろと立ち上がり、そこでチームRUNがバッジを使った。

 数日が経ったが、チャーレムとアーボは落ち込んだままだ。ゲンガーの気分が戻らないのだろう。
「まだ、だめなの?」
「ああ。なんか昨日は、キュウコンがどうの、サーナイトがどうの言ってたよ。ほとんど聞こえなかったけどな」
「キュウコンにサーナイトって……」
「リリー、何か思い当たることがあるの?」
 気のせいだろう、と思って、リリーは首を横に振った。

 だが、リリーの推測も、次の日になると正しかったと思わされた。
 ゲンガーがRUNの基地を訪問し、“樹氷の森”に連れて行ってほしいと懇願してきたのだ。
「な、なんでいきなり」
 ノアが目を真ん丸くして訊いた。
「あのキュウコンに頼んで、タタリを解いてもらいてぇんだ!」
「タ、タタリって、あの、リリーのせいにして、逃げて、あばば」
 ノアは驚きのあまり口がまわらなくなった。
「もう昔のことよ。ってことは、ゲンガー、人間なの?」
「……」
「図星みたいだね。ノア、行こう! 私だって気になるの」
 ノアは手を後ろにまわし、行きたくないという意思表示をした。
「無理しなくていいよ。ノアにとっても、あまりいい思い出がないだろうし……じゃあ、私とゲンガーとで行く」
「なんでリリーはそんなに優しいの? ボクは無理だよ。こんなこと知った直後に」
「ノア……それじゃあノアはここにいて。いつもみたいに救助活動をしてもいいし、チャーレムやアーボの話し相手になってあげてもいいし。ついてこなくても、ノアに出来ることはいっぱいある。友達エリアにはたくさんの仲間がいるしね」
「リリー……ごめんね」
 そう言って、リリーとノアは別れた。お互いの自立。いつも一緒に救助活動をしなければいけないわけではないし、実際友達エリアの仲間たちも、救助バッジを手に入れて好きにチーム編成をして活動している状態だ。いつかこういう話をする時がくるのだと、お互いどこかでわかっていたのだ。
「うん。それじゃゲンガー、行くよ!」
「おう。頼むぜ」

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