+ 第7話 それでもやり直せるのなら +


 “闇の洞窟”は、その名前からゴーストタイプや悪タイプのポケモンが多いと、リリーは予想していた。
 だが、実際には毒タイプに苦戦させられていた。
「ここにはモモンの実も落ちてない……癒しのタネ、食べるのもったいないなぁ」
「毒浴びたんなら食えよ、なっさけない」
「ゲンガーは毒を浴びないからわからないんだよ! これ、結構辛いの!」
 リリーの身体に毒が回り、苦しんでいると、また前方からクロバットが攻めてきた。
「こ、これ以上来られると」
「……“ナイトヘッド”!」
 その場はゲンガーが前に出て、クロバットを倒した。
「……ほらよ」
 ゲンガーはリリーに、癒しのタネを投げた。
「えっ」
 考えている暇はない。リリーはタネを頬張り、毒は身体から抜けた。
「オレの持ち分なんだから、あとで倍返しな、倍返し!」
「ハハ、しょうがないなぁ」

 ずっと下りていくと、キュウコンの言っていたように、窪みのある部屋にたどり着いた。
「ここに石っころを置けばいいんだな!」
 ゲンガーは“九尾の印”を窪みに置いた。
『お前、あのゲンガーだな?』
 リリーには、その声の主が<世界の審判>のものであるとすぐに分かった。
「サーナイトのタタリを解け! そんでもって、オレを人間に戻せ!」
『いきなり何だ。もっと丁寧に言えないのか』
「……タタリを解いてください、そしてオレを人間に戻してください」
『私もあまり時間がない。では、タタリを解くために、君に対していくつかの質問をしよう。ただ、回答するのは、リリー、お前だ』
 その言葉に驚き、リリーは自分を指して、え、と言った。
「ハァ? ありえないだろ! なんでオレのことなのにリリーが答えるんだよ!」
『今のままでは素直に答えられないだろう。リリーがゲンガーの精神世界に入り込み、ありのままの気持ちを答える。これが一番いいのだ』
 ノアたちは、そのやりとりを、途中から聞いていた。
「これが<世界の審判>の声ですか」
「そう。でも、<審判>の言葉から、やっぱりゲンガーが葉を盗んだといっていいかもね」
「はい。あ、始まったみたいです。さすがに精神世界でのやりとりは聞けませんかね……」

 リリーはゲンガーの精神に入り込んだ。
 自分はキュウコンの尻尾を掴んだ。
 そのために自分が受けるはずであったキュウコンのタタリを、サーナイトが代わりに受けてくれた。
 自分はその場から逃げ出して、気づくとポケモンになってしまった。
 自分はサーナイトを見捨てた愚か者だ。
 反省しているし、サーナイトを助けたいと思っている。
 むしが良すぎることは重々承知している。
 それらの感情をしっかりと掴み、リリーは<審判>からの質問に答えた。 

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