「ここでお別れですわね」
「ああ。カントー行きの船がこんなに早いなんてな」
三人は、“謎の大陸”の出入り口、“地図にない町”に戻っていた。
「ええ。もう少しここにいたかったのですが。……でも、姉や兄が、あの不思議なエネルギーについて知っているかもしれませんし、戻ってから知りたいことだっていっぱいありますわ。それに、これからのことだって」
「そっか。元気でな」
エデルは、ステラとカグロと握手を交わし、船に乗り込んだ。
クチバシティから3の島へ、シーギャロップ号で移動し、エデルは故郷の屋敷へ戻った。
「ただいま帰りました」
「エデル! 大丈夫だったか?」
「ええ、楽しい旅でしたわ」
エデルはその日の夜、両親に旅の話をした。二人とも興味深そうに耳を傾けた。
「それと」
エデルは一泊置いて深呼吸し、また口を開いた。
「タマムシ大学に進学するということは、ドレイデン家の夢であり、わたくし自身の夢でもありますわ。でも、どの学部学科に進学するかは、わたくしに決めさせてください」
「なっ……」
「やりたいことが、はっきり決まったんです。止められても、やめる気なんてありませんから」
□
“地図にない町”とイッシュ地方を結ぶ船などめったに出ない。
この大陸は、カントーやジョウトとの交流は進んでいるらしいが、他の地方とはめっきりなのだ。
今回はラティオスだっていない。そのため、カグロはしばらく、ステラの家にお世話になっていた。
母もステラの顔を見て喜び、二人の冒険談を聞き、今はかなり元気だ。
「ステラ」
「何だ?」
「バトル……しないか?」
「えっ?」
町のアスファルトに寝転んでいたステラは、その言葉に飛び起きた。
「い、いや、オイラは大歓迎だけどさ、前、俺の満足できるポケモンバトルはできそうにないって言ってたよな? ついにオイラを認めてくれたってことか?」
「は?」
カグロは驚き呆れた。
「は?」
ステラは同じ言葉を同じような表情で返した。
「だって、ネオラントゲットしたばっかりだったし。育ちきってないのに、満足できるバトルなんてできるわけないだろ」
「そ、そういう意味だったのかー!」
「他にどんな意味が」
「ややこしいんだよ!」
それから、ステラはロトを呼んだ。海を見ていたロトは、ついに出番かと、ステラのもとへ駆け寄った。
「それなら、バトルだ、一対一な! いくぞ、ロト!」
「望むところだ。出番だ、ネオラント!」
その少年たちのポケモンバトルに、町の人たちは立ち止まり、思わず見入る。遠くの方で、ニュートラル・リザードンが祝福の炎をあげた。
The Town on No Map
Fin.
Next Stories are...
⇒リトル・サクソフォニスト・ボーイ(ステラ)
⇒朝の港にて(カグロ)
⇒おそろいの髪(エデル)
⇒北の開拓者たち(三人)